更新料「無効」判決にすくむ賃貸住宅業界、礼金やハウスクリーニング代に波及も

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 原告側の弁護団である長野浩三弁護士は「更新料は何のおカネがわからず、支払うのは不合理」と話す。消費者契約法10条によると、更新料は「消費者の利益を一方的に害するもの」であり、金銭的対価に見合う合理的根拠が見いだせないという。

“震源地”の京都は全国でも更新料が高いことで知られる。最近まで1年契約で2カ月分の更新料が発生する物件も珍しくなかった。更新料を設ける代わりに、賃料を安く抑えているとしても、消費者にとっては紛らわしい。

安い家賃が魅力で契約しても、更新料などを上乗せすると、実際の賃料は他物件と差がなくなる場合もある。昨年8月の高裁判決では「実質的に対等にまた自由に取引条件を検討できないまま当初本件賃貸借契約を締結」したと、支払った5年分の更新料など45万5000円の返還を家主に命じた。

反響は大きく、京都では集団訴訟に発展。和解金を支払う事例も出ており、更新料をなくすオーナーが増えている。だが「家賃に値上げ転嫁するのは難しく、更新料ゼロは事実上の値下げ」(日本賃貸住宅管理協会・京都支部)との声も聞かれる。

これは決して対岸の火事ではない。更新料は東京や千葉、埼玉では6割以上の物件で導入されている。最高裁判決で更新料が否定されれば、影響は全国へ広がるだろう。

返還請求が広がれば破産する大家も

不安を高めるのがマンションオーナーだ。東京都目黒区で賃貸マンションを経営する安藤泉さんは「経営が成り立たなくなる個人家主が出てくるのでは」と危惧する。大規模修繕や火災報知器の設置、地上デジタル放送対応など、家主には多くの不定期な支出が生じる。さらに物件で自殺者や病死者が出れば、クリーニング代や空室リスクも出てくる。

不測の事態に備えた積立金が更新料返還に回れば、たちまち経営は火の車になりかねない。東京共同住宅協会の谷崎憲一会長は「賃貸経営の8割が個人大家だが、不景気で都内の空室率は20~30%が当たり前。すでに経営環境は厳しいのに」と不安視する。

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