「教師が教える」から子供が学ぶへ転換が必要な訳 未来の世代が幸福に生きる為の教育に必要なこと

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ただ、インターネットが万能かというとそうではありません。ネットリテラシーや批判精神がなければ、根拠のない情報も鵜呑みにして信じ込んでしまいます。逆に言えば、情報をうまく操作すればみんなが簡単に騙されてしまう世界が広がってきたわけです。実際に、SNSではさまざまなデマ、陰謀論も飛び交っています。

このような時代背景や環境の下で教師の役割を問い直してみても、これからのテーマは、「教師が知識をどう教えるか」ではなく、「子どもたちの学びをどう育てるのか」だということがわかります。

学校で教師が子どもたちにできることとして、たとえば次のようなことが考えられるでしょう。

同じテーマについて書かれた異なる文章を読み、「どっちが正しいと思う?」とみんなで議論をする。怪しい情報はどうすれば見抜くことができるのかを学ぶ。学んだことをみんなの前で表現して、「どうしてそんなことが言えるんですか」「そこはちょっと違うと思います」などと、質問を受けたり、批判されたりしながら自分の考えを検討する。異なる意見を持っている人とも討論を楽しむ場をつくる。

教育について考えるとき、考えなければならないのは、次世代の生きる世界です。次の世代は、前の世代が全く体験してこなかった新たな局面を体験するのですから、それに備えて上手に生きていく力をつけなければなりません。背景となる社会の大きな変化を捉えながら、「教え」から「学び」へ移行していくと同時に、その「学び」の内包を豊かにし、学び方を充実させなければならないのです。

そして親世代も、移り変わる時代の中で自己実現していくために、自分自身の生き方や学びについて考える必要があるでしょう。

新しい教育の軸は「未来世代の権利」

ここで、新しい教育を考えるために、2人の学者を紹介します。

まずは、ジャック= イヴ・クストー(1910-1997)というフランスの思想家についてです。

クストーは「未来世代の権利」ということを初めて提唱した人で、地球環境保護運動や海洋考古学の先駆者でもありました。晩年になると、地球倫理について研究を進めた海洋学者でした。

彼はモアイ像で有名なイースター島の周りの海底調査をしたときに、こんな発見をします。「イースター島の文化が滅びたのは、木を切りすぎて森が無くなってしまったことによるのだ」と。そして、このままでは、人類はイースター島と同じ運命をたどると警告しました。そして、生物の多様性と文化の多様性は結びついているということも強く訴えました。

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