「教師が教える」から子供が学ぶへ転換が必要な訳 未来の世代が幸福に生きる為の教育に必要なこと

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クストーは子ども、孫、そのずっと先の世代までのことを考え、「子ども」と言わずに「未来世代」と表現しました。私たちは未来世代からこの地球を託されているのです。そしてもう1人、ドイツの哲学者のハンス・ヨナス(1903-1993)も『責任という原理』という本に「未来世代」について記しています。その本の副題は、「科学技術文明のための倫理学の試み」ですが、そこで、彼はこんなことを訴えています。

「いま、人類の倫理学でいちばん欠けているのは、未来の人が幸せに生きていくために私たちがいまどうすればいいのかということだ。現在、環境破壊は未来世代の人類も脅かしつつある。だから、現在世代は未来世代を存続させる責任を負う」

この2人の「未来世代」の「権利」や「責任」という言葉を受けて、私たちが子どもたちにどのような教育ができるかを考えるならば、これからの教育において大切なことは、子どもたちがこの地球を大事にしてくれるように育てることだと思います。そうしない限り、未来世代は幸せになれません。

SDGsの国連の文章の中には、「持続可能性というのは、その未来世代が自分たちのニーズを実現しようとしたときに、それができるようにすること」とあります。クストーやヨナスの考え方を、これからのマインドセットの軸として取り入れるべきでしょう。

子どもたちは対等なパートナー

日本において学校を上手に軌道修正していくためには、教育現場や社会が、「こうすればみんなが幸せになる」という目標を示し、子どもたちと一緒に学ぶ姿勢になる必要があります。

そうなったときに再び、「学校っていいものだなあ」と誰もが感じられるようになり、学校は信頼を取り戻すことができるはずです。

しかしいまはまだ残念ながら、そうはなっていないようです。

『教えから学びへ 教育にとって一番大切なこと』(河出書房新社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

学校が、ようやくSDGsにも取り組み始めたことは、学校教育を確実に変えていくと私は期待しています。SDGsには、地球環境や貧困の問題だけでなく、いま、人類が抱えている課題が全て含まれてもいるからです。

SDGsの17の目標の最後には「パートナーシップで目標を達成しよう」とあります。

パートナーシップには、「全ての相手が対等なパートナーなんだ」という考え方が含まれています。これは、民主主義の考え方です。

教師と子ども、親と子ども、どんな関係であっても、子どもを「一緒に生きていく対等なパートナー」と見ることで、その関係性は大きく変わっていくはずです。そうすれば、子どもたちにとっての「学び」の意味も変わっていきます。そして、「学び」が子どもたちの生き方を支え、未来世代を支えることにつながっていくはずです。

汐見 稔幸 東京大学名誉教授、白梅学園大学名誉学長

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しおみ としゆき / Toshiyuki Shiomi

1947年、大阪府生まれ。専門は、幼児・児童教育学、保育学、教育学。著書に『本当は怖い小学一年生』『「天才」は学校で育たない』(いずれもポプラ新書)など。

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