日本は米国や台湾からコロナ対策を学んでいない 日本経済が「コロナ禍前」に戻るには何が必要か

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菅政権がワクチン接種に注力していることは妥当。だがやるべきことがまだまだある(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

7月29日に発表されたアメリカの4~6月期GDP成長率は+6.5%(以下、前期比年率ベースで表示)と、1~3月期とほぼ同様の高成長が続いたことが示された。

内訳を見ると、ワクチン普及で経済活動制限緩和が進み、個人消費は+11.8%と、前期に続いて2桁超の伸びとなった。設備投資も+8.0%と大きく伸びて、家計と企業双方の支出拡大が経済成長を支えた。

アメリカは2021年後半も年率6%前後の成長維持

GDP(+6.5%)が個人消費などよりも低い伸びになったのは、供給不足によって企業の手元にある在庫が減り、材料不足などで住宅投資が減少したためである。加えて、連邦政府による支出減少もGDPを押し下げたが、2020年に行われた企業に対する政府の特別支援策が終了し、これに付随する政府支出の減少が影響したもようである。

製造業や住宅市場における供給制約は今後徐々に和らぐと予想される。また企業への支援措置終了による政府支出の減少も、一過性の動きである。つまり、4~6月期に足かせとなった在庫投資などは2021年後半のGDP成長率を押し上げると予想される。

一方、 これまでのような年率2桁以上の個人消費の急拡大は続かず7~9月期から減速するとみられるが、先述の押し上げ要因があるため、2021年後半もアメリカのGDP成長率は年率換算で6%前後の高成長が続くと筆者は予想している。

もちろん、アメリカ経済にもリスクはある。7月初旬からは同国でも新型コロナウイルスの感染者数が再び増え続けている。現在感染の主体となっているデルタ株は、人から人への感染力がかなり強いとの調査がCDC(米疾病対策センター)から発表されており、一部地域ではマスク着用を推奨するなどの感染抑制政策が再び採用されている。

感染拡大も多少影響してか、それまで改善していた消費者心理指数が7月にやや低下しており、筆者の想定よりも経済成長が停滞するリスクが浮上している。ただ、感染力が強いとされるデルタ株に対しても、主要なワクチンによる感染、重症化予防効果はかなり高いとの報告がある。7月に感染者数は増えているが、これはワクチン接種率が低い州に集中しているし、イギリスでも観測されているが、感染者が増えてもかつてのような死者の増加に今のところつながっていない。

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