これらを踏まえると、コロナ感染者の増加がアメリカの経済活動に若干影響するとしても、医療体制が逼迫して経済活動が再び制限される可能性は、かなり低いとみられる。このため、2021年後半もアメリカにおいて経済の高成長が続くとの筆者の予想を変更するには至らない、と現状判断している。
アメリカでは財政政策の後押しとワクチン普及によって、2021年前半が年率6%を超える高成長となり、同年4~6月期の時点で、新型コロナ禍前の2019年10~12月期の実質GDPを約+0.8%上回ってきた。では、アメリカの経済復調を、他国と比べると、どう位置づけられるか。
日本の回復はユーロ圏より良いがアメリカに遠く及ばず
まずユーロ圏は、4月以降にワクチン普及が進んだことで経済活動の制限が緩和されたため、4~6月期だけみればアメリカを上回る高成長だった。ただ、コロナ禍前のGDPの水準を依然として約3%下回っており、アメリカと比べると経済復調は大きく遅れている。
経済統計のインフラ整備が遅れている日本は、4~6月期のGDP成長率がまだ(8月16日発表予定)だが、6月分の鉱工業生産などの統計を踏まえると、4~6月期のGDP成長率はほぼゼロにとどまったと試算される。日本ではワクチン普及が進んだが、緊急事態宣言発動に伴う緩やかな経済活動制限によって、個人消費が引き続き減少したためである。筆者の試算どおりであれば、GDPはコロナ禍前と比べると約2%低く、ユーロ圏ほど悪くはないが、アメリカよりも経済回復はかなり遅れている。
一方、米欧諸国だけでなく中国、香港、台湾、韓国、シンガポール、メキシコ、チェコにおいても、すでに4~6月期のGDP成長率が発表されている。そのなかで、GDP統計の信頼性が低い中国以外のアジア各国について、コロナ禍前(2019年10~12月)と2021年4~6月のGDPを対比すると、台湾+5.9%、韓国+1.4%、シンガポール-1.3%、香港-5.9%である。これらの国は新型コロナ感染抑制対策が総じて日本よりもうまくいっているが、経済パフォーマンスの格差は案外大きい。
台湾と韓国は、先進国の中で最もパフォーマンスが良いアメリカよりも、経済回復が順調に進んだ。アメリカの経済回復が財消費に偏って起きたため耐久消費財需要が大きく盛り上がり、世界的に財市場が逼迫するに至り、半導体などでは生産が間に合わない供給制約にすら直面した。こうしたなかで、ハイテク品の輸出需要が急増したため、主要な輸出国である台湾、韓国の経済成長を高めたと言える。
また台湾の経済パフォーマンスが韓国を上回っているのは、コロナ感染抑制に最も成功したからだろう。一方、香港における感染症対策も、シンガポールなどと同様に徹底されて機能していたとみられる。ただ、政治リスクが高まる中で金融都市としての地盤沈下が進み、さらに中国経済の復調がスムーズではないことも香港の経済成長の足かせになっているのだろう。
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