雇用されない「保険募集人」は宝の山 ソニー生命OBがマッチングサイトを考案

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しかし雇用関係になると、代理店には社会保障関連の負担ものしかかる。そのためこれまで働いていた代理店での雇用が確保される見込みはなく、現在の代理店で雇用されなかった保険募集人が他の代理店で雇用される可能性も小さい。結局は廃業か自らが代理店を開業することを選ばざるをえない。

そうした保険募集人の受け皿として、保険業者向けのコンサルティングを業務とするアスミックが考案したのが、「保険営業ナビ」だ。

「保険営業ナビ」は2つのサイトから構成される。ひとつは消費者が相談相手(会員保険募集人)を検索し、相談を申し込める「保険のコーチ」で、もうひとつは保険相談を受ける会員保険募集人を募る「保険募集人ドットコム」だ。

会員保険募集人になるには運営会社の審査を経て、年額2000円(税別)の登録料を支払い、「保険募集人ドットコム」に登録しなければならない。また「保険のコーチ」では、誰でも自己の個人情報を提供することなく無料で保険募集人を閲覧でき、自分に適すると思う相手に申し込みをできる仕組みになっている。

同サイトを運営するアスミックは少額短期保険の普及と拡充を目的としたNPOとして発足し、2007年に株式会社化した。主として保険代理店開業のサポートや、人材派遣などを行っている。飯島通久社長は、慶應義塾大学卒業後、ソニー生命保険に勤めていた。

ベテランのノウハウや経験を活用

飯島社長はシステムを発案したきっかけについて、こう話す。「今後、多くの保険募集人が職を失うことになるだろう。しかし彼らが保険募集人として有能ではなかったというわけではない。親の介護の合間に保険募集人を務めている人もいれば、年齢的な問題から新規契約をとらずに昔からの顧客の保険契約のメンテナンスだけを行っている人もいる。そういったベテランは経験により蓄積されたノウハウを持っており、顧客の信頼も厚い。彼らが保険の市場から出ていってしまうのは、いかにも惜しい」。

保険募集人側の事ばかりではない。飯島社長は、同サイトを活用すれば消費者側にもメリットが大きいと言う。

「これまでの保険は保険会社こそ選べるが、保険を相談する相手については消費者自身が選ぶことができなかった。しかし保険は消費者が自分の個人情報を開示しなければならないし、見直しも含めると長い付き合いになる。よって保険募集人と消費者の間に信頼関係があることが必要なのに、これまではたまたま保険を勧めた保険募集人や相談窓口で対処した人が担当になっていた。『保険営業ナビ』なら消費者が自由にアクセスでき、保険募集人の実績など情報をもとに『この人なら』と判断することができる」

金融庁が2015年3月末までに生損保各社に適正化を求めることに先立ち、「保険営業ナビ」は8月中旬から運営を開始し、まず5万人の登録を目指すという。今後、既存の代理店に雇用されない保険募集人をめぐって、こうした動きが活発化しそうだ。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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