中国と北朝鮮、本当の関係は?韓国で大論争 北朝鮮への中国の原油供給「ゼロ」をめぐる謎

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今年7月末に韓国の大韓貿易投資振興公社(KOTRA)がウェブ上で公開した北朝鮮の貿易統計によれば、2013年の北朝鮮の貿易規模は前年比7.8%増となる73.4億ドルとなり、分析を開始した1990年以降、最大規模になったとしている。輸出は32.2億ドル(前期比11.7%増)、輸出は41.2億ドル(同5%増)と貿易赤字ながらも、どちらとも規模は拡大している。

特に、貿易相手国トップは中国で、しかも貿易額全体に占める中国のシェアは89.1%。52.6%となった2005年以降徐々に拡大しており、また時期を同じくして国際的な経済制裁が始まったにもかかわらず貿易額は拡大していることになる。これだけ見ると、経済制裁の効果がどれほどのものだったのかがうかがいしれる。

中朝の人的交流はむしろ活発に

さらに、モノだけでなく人的交流も活発に行われている事実もある。2013年2月の3回目の核実験に加え、同年12月に「親中派」とされてきた張成沢氏が処刑されたことで、中朝間の政府高官レベルの往来は途絶えているとされている。だが、このような状態にもかかわらず、政治以外の交流は継続して行われていると、『ハンギョレ』は指摘している。

同紙は中国・吉林省延吉市で旅行代理店を経営する朝鮮族の社長の話として、「3回目の核実験直後には、中央政府から北朝鮮観光を中断せよとの指示が出たが、今年はその指示も撤回され、これまでと同じように北朝鮮観光をアレンジしている」という話を紹介。また、駐中国韓国大使館関係者は「北朝鮮から政務レベルの高官らは訪中していないが、実務級の交流は続いている。経済など技術官僚の視察や教育省関係者の訪中は続いている」と述べている。

「ゼロ」ミステリーの真偽は、中国当局が口を固く閉ざしているため、「ゼロ」「ゼロではない」との主張は推論の域を出ない。日本でも、日朝間が接近しているのは拉致問題だけでなく、中国との経済関係が悪化したためだ、という主張も少なくはない。だが、事実をひとつひとつ集めていくと、中朝間はこれまでと同様、それほど悪化しておらず、ビジネスライクな関係は変わらず続いていると思われる。

韓国・聖公会大学のイ・ナムチュ教授は「最近の中朝関係の一時的で小さな変化を、あるいは沈滞ムードを指してあまりにも拡大解釈することは危険であり、中朝関係の本質を見誤る。北朝鮮と中国は互いに理解し合っているため、関係が急激に悪化する可能性は低い」と述べている。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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