「規制か緩和か」中国が直面しているジレンマ

成長し続ける「中国デジタル革命」の陰とは

しかし、大手プラットフォーマーに行動変容は見られず、同年の「独身の日」の大セールでは、慣例通り大手プラットフォーマーは他のプラットフォームに出店する業者を排除。これに対し、国家市場監督管理総局はアリババや京東という大手ECプラットフォーマーに、出店業者の他社との取引を制限することは法律違反だと警告した。

市場の独占以外にも、巨大化するプラットフォーマーの弊害がある。

データ活用かプライバシー保護か

それは、プライバシーの問題だ。

言うまでもなく、デジタル経済では、富の源泉はモノではなく情報(データ)だ。データの経済的価値に対する認識は高まっており、ビッグデータを活用して新たなニーズを発見し、新たな価値を生み出そうという動きが活発である。同時に、ビッグデータの蓄積と活用による人々のプライバシーの侵害への懸念は高まるばかりだ。

中国では緩いデータ保護規制のままデジタル技術が進展を遂げ、ここ十数年間で膨大な個人データが蓄積された。そして、広範囲でそのデータが活用され、さまざまなサービスが誕生している。

一方で、中国社会はデータ活用かプライバシー保護かといった問題を巡る論争が激化している。便利なデジタルサービスを受けられれば、個人情報を犠牲にしてもいい時代から、個人情報保護の意識が高まり、プライバシーを重視する時代に変わった。

中国では3月15日は「消費者権利デー」と呼ばれ、中国国営放送の「中央電視台(テレビ)」が毎年「問題企業」をあぶりだす「315晩会」という名のドキュメンタリー番組を放送する。今年は同番組で、お店に設置された監視カメラで消費者の顔データを収集したり、転職サイトに出している履歴書情報が転売されたりする「問題企業」をあぶりだした。

いつもと違う異例の「消費者権利デー」で企業による個人情報の不正取得と転売を大いに批判し、話題を呼んだ。個人情報の取り扱いに関する議論が再びクローズアップされたことだが、個人情報の保護とデータの合理的な活用との両立の実現がまだ遠いという現実でもある。

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