経済学者の予測が驚くほどハズレる根本理由 ノーベル賞受賞経済学者による告白と解決策

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データを検討する経済学者は伝統的に、抽象的な理論モデルを作ったり、短期経済データを分析したりするのに手腕を発揮してきた。数四半期先のマクロ経済的変化を正確に予測できるが、過去半世紀にわたり、1年後についての彼らの予測は全体として役立たずだった。

1年後にアメリカGDP成長率がマイナスになる可能性はどれくらいだろうか? 経済学者の予測は実際のその後のマイナス成長率とはまったく関係ない。

ファゾムコンサルティングの調査によると、国際通貨基金(IMF)が各年で発行する『世界経済見通し』で行っている、194カ国における1988年以来の不景気(前年比でその国のGDPが下がった場合と定義)469件のうち、IMFが正しくマイナス成長を予測したのは17件でしかない。そして不景気になると予測したのに実現しなかった例は47件あった。

こんな予測実績でも、天気予報に比べればマシだと思うかもしれない。天気予報だってほんの数日先がせいぜいだからだ。

でも経済的な判断では、人々は普通は何年も先のことを考える。子どもを高校に行かせるか、4年も大学に行かせるかを考え、30年の住宅ローンを組むかを考える。だから今後数年の景気が好調か不調かが、少しくらいはわかりそうなものだ。

専門の経済学者が無視してきたもの

経済予測者たちは、これでも精一杯やっているのかもしれない。だが経済事象が繰り返し、何の理由もなくやってくるように見えるのを考えれば、経済理論には根本的な改善の余地があるのではとそろそろ思うべきではないだろうか。

専門の経済学者が、過去を解釈したり未来を予測したりするとき、ビジネスパーソンや新聞記者が考える状況を引用したりすることはほとんどないし、ましてタクシー運転手の考えなどを聞くことはない。

でも複雑な経済を理解するには、経済的な意思決定に関連する多くの対立する世間的なナラティブやアイデアを考慮しなくてはならない。そのアイデアが正しいかまちがっているかは関係ない。

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