司令塔なきゲリラ戦に陥った公約の“脱官僚”--『官僚のレトリック』を書いた原英史氏(政策コンサルタント、元行革担当相補佐官)に聞く
--なぜそうなったのでしょう。
自民党政権時代の失敗の研究が足りていない。天下りの根絶や脱官僚の政治主導体制づくりは、もちろん民主党が初めて取り組むことではない。これまでの自民党でも歴史的経過がある。どこで失敗したのかを勉強していれば、ここまで典型的な落とし穴に落ちるようなことを繰り返さなくてもすんだ。
--典型的な落とし穴とは。
たとえば天下りであれば、斎藤次郎さんの日本郵政社長人事。当時、総理は弁明として、能力のある人だからいいのではないかと言った。結果的に、これがつまずきの石になって、それ以降天下りをどんどん認めていく方向に動いてしまっている。
安倍内閣時代の天下り規制の議論に、よい天下りと悪い天下りがある、悪い天下りは根絶しなければならないが、能力を買ってのよい天下りはその必要はないという主張があった。実はこのレトリックは、天下りはすべてよい天下りだという仕掛けになっている。なんらかの説明がつく人がポストにつくからだ。
--公務員改革は進みますか。
本来、霞が関改革はそう時間をかけるものではない。大プロジェクトのように思われているが、これは会社になぞらえれば、内部の人事制度や組織の見直しであって、本当に大事なのはその会社がどういう商品をつくってどう売っていくかのはず。さっさと改革して本来やるべき先のテーマに取り組んでいかないといけない。
(聞き手:塚田紀史 =週刊東洋経済2010年6月12日号 ※インタビューは5月下旬)
はら・えいじ
1966年生まれ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学ロースクール修了。89年通商産業省入省。2007年から安倍・福田内閣で渡辺喜美行政改革担当相補佐官、国家公務員制度改革推進本部事務局を経て、09年退官。政策工房を設立し、大阪府人事委員会特別顧問、政策研究大学院大学客員准教授も兼務。
『官僚のレトリック』 新潮社 1470円
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら