有楽町線延伸や品川地下鉄…「新線構想」の現在地 メトロ株売却とともに「早期事業化図るべき」
地元が整備を求めてきた有楽町線延伸とやや異なり、都が中心となっているのが「都心部・品川地下鉄」だ。同線の構想は、都が2015年7月に取りまとめた鉄道ネットワークに関する検討結果「広域交通ネットワーク計画について」において「整備について検討すべき路線」の1つとされ、翌2016年の交政審答申に盛り込まれた。
同線は品川駅と東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線の白金高輪駅を結ぶ約2kmの構想で、南北線への乗り入れが考えられている。リニア中央新幹線の駅開業などをはじめとする品川駅周辺の開発と合わせた整備を念頭としており、2016年の答申では意義として、「六本木等の都心部とリニア中央新幹線の始発駅となる品川駅や国際競争力強化の拠点である同駅周辺地区とのアクセス利便性の向上」を掲げている。
一方で、当時は「検討熟度が低く構想段階」であるとして、「事業計画について十分な検討が行われることを期待」との表現にとどまっていた。今回の答申では「早期の事業化を図るべき」と大きくステップアップし、約5年を経て位置づけがだいぶ向上したといえる。
一段階下の臨海地下鉄
背景にあるのは事業費の大幅削減だ。2016年の答申時は約1600億円としていたが、国交省が2019年度に実施した調査では約800億円に半減した。品川駅での折り返し施設設置などを事業に盛り込まないことにしたためだ。このため、費用便益費も1.2から2.5~3.1へ改善。「事業化の実現性が向上した」としている。
「品川地下鉄」ではあるが、構想路線は港区内を通る。同区が中心となって進めてきた構想ではないというものの、区の期待感は大きい。品川駅周辺の開発が進みつつあることも、実現への追い風になりそうな点だ。同区の担当者は、「(品川駅周辺は)高輪ゲートウェイ駅の開業に伴い街づくりも進み、リニアの駅もできる。地下鉄が開業すれば交通結節点として広域交通の利便性が向上する。ぜひ進めていただきたい」と語る。
一方、これら2路線と比べ、「事業化に向けて関係者による検討の深度化を図るべき」と一段下回る表現だったのが、都心部・臨海地域地下鉄新線だ。
同線は臨海部の国際展示場付近から勝どきなどを経て銀座・東京といった都心部を結ぶ構想で、地元中央区が2012年度から検討を始めた。2016年の答申では「検討熟度が低い」とされたものの、つくばエクスプレス(TX)の秋葉原―東京間延伸と一体で整備し、直通運転などを含め「検討が行われることを期待」との方向性が示された。
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