私たちはなぜ眠る?日本人に足りない眠りの効能 質の高い睡眠は究極のアンチエイジングである

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睡眠はまた、脳を毎晩、脳脊髄液に浸すことで冴えた頭脳を維持する。睡眠中は、脳脊髄液が脳内に滲み出し、有害な老廃物を押し流してくれる。

この老廃物には、アルツハイマー病患者の脳に見られる異常タンパク質(アミロイドβとタウタンパク質)も含まれる。たったひと晩でも睡眠時間が短いと、脳脊髄液中のアミロイドβは30%、タウタンパク質は50%も濃度が高くなってしまうという。

これらの濃度が高いと、そのふたつが蓄積して凝集し、アルツハイマー病の特徴であるプラークと「もつれ」を形成しやすくなってしまう。

睡眠とうつ病の関係

最近では、長引くうつ病の原因は睡眠障害にあると結論づける研究結果も増えてきた。睡眠とうつ病との関係は、つまるところ、脳の奥深くに位置する扁桃体に行き着くのかもしれない。

過敏な扁桃体は、ごくささいな出来事でも大きなストレス要因と捉える。多くのうつ病患者の扁桃体は活発だ。驚くべきことに、たったひと晩睡眠不足だっただけで、扁桃体が約60%も反応しやすくなると主張する人もいる。睡眠不足のときにイライラしやすい理由もここにある。

睡眠が足りているときには、前頭前皮質の“理性の声”が扁桃体の働きを抑制する。幸せを感じやすくなり、ストレスに強くなる。

カリフォルニア大学教授のマシュー・ウォーカーは、睡眠負債(毎日の睡眠不足の積み重なり)が社交生活に及ぼす影響について研究している。

ウォーカーによれば、睡眠不足が蓄積すると人づきあいを避けるようになるという。それだけではない。引きこもりのような効果を生み、人づきあいを避けたがっているというシグナルを周囲の人間に送ってしまい、周囲があなたとのつきあいを躊躇してしまうのだ。

社交生活を円滑にするためにアルコールに頼る人は多いが、まずはその前に、睡眠の質を改善しよう。

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