トヨタ「ライズ」が負けた?そのカラクリを探る トヨタ唯一の5ナンバーSUVという本質的な価値

拡大
縮小
販売台数から見るとヤリスの人気が際立つが、販売台数はコンパクトカーのヤリス、コンパクトSUVのヤリスクロス、スポーティモデルのGRヤリスを合算した数値になる(写真:トヨタ)

そこで内訳を見てみると、今年6月には(以下、トヨタ広報による数値で1桁台は省かれている。このため3車種の合計が1万3940台となるが、自販連の数値では1万4937台と差が生じている)ヤリスが6980台で、ヤリスクロスは6530台、GRヤリスは430台となっており、ヤリスクロスの比率は47%弱と計算できる。また、今年の1~6月の集計においても、ヤリスクロスの比率は46%とほぼ変わらない。

ライズの荷室容量(写真:トヨタ)

ヤリスクロスの動向に対し、ライズは今年の1~6月に4万7965台(自販連データ)であり、半年間の集計では7195台及ばないのだが、6月単月の台数を比較すれば6725台で、ヤリスクロスの6530台(トヨタ広報データ)を上回っている。

こうしてみると、単に勝ち負けのような言い方をすれば、現実的な数値でヤリスクロスが上まわる傾向であるのは事実だが、ライズ人気が落ちている、負けているとは、一概にはいえないだろう。

5ナンバーサイズという価値は消費者にも届いている

ライズの走行イメージ(写真:トヨタ)

今年6月の販売で、5ナンバーワゴンの「ルーミー」が1万4337台を売って2位に着けた。1~6月の集計でも、ルーミーはヤリスに次ぐ2位となっており、発売から5年目に入った同車両がここまで上位に入っている状況は、まさに国内での5ナンバー車需要を示している。

また、登録車だけの統計ではなく軽自動車を含めた順位においても、ヤリスに次いでホンダ「N-BOX」が存在するなど、アルファードのような大柄なミニバンが好調であるのと同時に、5ナンバー車という価値の大きさを表しているといえる。なぜなら、現在の軽自動車規格の車体寸法は、1960年代の初代カローラなどと車幅はほぼ同じであるからだ。

今年1~6月の集計で、ライズにダイハツのロッキーを加えれば5万9185台となって、ブランド通称名での3位に入るアルファードを抜き、ルーミーに次ぐ3位の台数に位置づけられる点を見ても、単にヤリスクロスとライズの勝ち負けを統計数値上の販売台数で論じることの無意味さを示すといえるだろう。

スズキの5ナンバーSUV「クロスビー」と「ジムニーシエラ」(写真:スズキ)

スズキには、「クロスビー」や「ジムニーシエラ」など競合する5ナンバーSUVがあるが、それらは6月の販売台数で30位以下である。ライズがいかに消費者を広く魅了しているかが浮き彫りになる。ライズはいまも健在。それが結論ではないか。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT