強制を嫌う仏国民が「ワクチン義務化支持」のなぜ この時期にどうしてもやめたくないことがある
フランスのマクロン大統領は7月12日のテレビ演説で、医療および介護従事者への新型コロナウイルスのワクチン接種の義務化と、施設などに入る際に提示が義務づけられる健康パス(ワクチン接種や抗体検査の証明)の適用拡大を発表した。
医療・介護従事者へのワクチン接種については、9月15日までに二度の接種を完了させる方針だ。従わない場合は休職処分、罰金、解雇などが検討されている。マクロン大統領は演説の中で、「一般国民のワクチン接種の義務化も検討したが、現時点では国民を信じ、義務化しない。ただ、感染拡大で医療が逼迫すれば検討する」と述べ、国民の接種義務化の可能性も排除しないと述べた。
健康パスの提示義務については、これまで1000人以上収容するスポーツ施設などに限定されていたが、7月21日から50人以上が集まる娯楽・文化施設に拡大。8月1日から、カフェ、レストラン、ショッピングセンター、病院、高齢者施設、長距離の航空機などによる旅行者にも拡大される。
「バカンス」を止めるとパニックが起こる懸念
欧州では、フランスに先立ちイタリアが今年4月、医療従事者のワクチン接種を義務化した。イギリス政府も10月から介護施設職員らの接種を義務付けることに言及している。今回はフランスとギリシャが義務化に踏み切ることを表明した一方、ドイツは義務化の予定はないとしている。
ワクチンの義務化に踏み切る国が出てきた理由は、今年の夏のバカンスを厳しい規制の中で過ごさせることでパニックが起こるという危機感が政府側にあるからだ。さらに感染力の強い新型コロナウイルス変異株「デルタ株」の感染増加で医療体制が逼迫する懸念もある。
お隣のイギリスは新規感染数が急増し、今月7日から1日の感染者数が3万人を超えているが、ほぼすべての規制を7月19日に撤廃する。背景にはイギリスの1回のワクチン接種率は全人口の86%と高く、デルタ株感染者の重症化率が低いためだ。
それに比べれば、ワクチン接種が進んでいないフランスでは、今後の医療体制の逼迫懸念もある。マクロン大統領は「事態は制御されているが、今行動しなければ、感染者は大幅に増え、入院件数が増えることにつながる」と警鐘を鳴らした。
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