こうしてソフトバンクのロボットが誕生した 僕は何をするために生まれてきたのか

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舞台の袖から姿を現した孫正義社長が、赤く光ったハート型のオブジェをロボットに差し出す。それを受け取ったロボットは胸部のタブレット端末に埋め込むしぐさを見せる。すると、画面の中でハートが動き出す──。6月の発表会でソフトバンクが披露したヒト型ロボット「ペッパー」に、感情が与えられたことを示すシーンだ。

ロボットの手にハートを渡す人の手。実はこの場面、2010年の株主総会で発表した「新30年ビジョン」のスライドに描かれていた。孫社長は当時、300年後の人々は多くのロボットを使いこなしていると力説。「ソフトバンクは優しさや感情をロボットに提供していきたい」と事業参入に意欲を示していた。

トップ会談で意気投合

アルデバラン社のメゾニエCEOとペッパー。ヒト型ロボットによる「コミュニケーション」にこだわりを持つ(撮影:今井康一)

夢は実現に向けて早々に動き出す。11年、世界中のロボット会社を調べ、目星をつけたのが研究用のヒト型ロボット「nao(ナオ)」を世界で展開する仏アルデバラン・ロボティクス社だった。

同社のブルーノ・メゾニエCEOと会談した孫社長は出資を即決。「1時間半の予定が、孫社長と意気投合して8時間も話した」(メゾニエCEO)。人とのコミュニケーションを重視するというビジョンが同じだったからだ。

そんな“両親”から生まれたペッパーは、歌舞伎やタブレットを使った紙芝居を披露し、自分の主題歌を歌うなど多芸多才。「冗談は顔だけにしてください」、「あなたの運勢は落ちていくだけ」など、毒舌をポンポン口にしたり、思わず笑ってしまうような軽妙な切り返しも持ち味だ。ソフトバンク銀座店でペッパーが接客をし始めると、客数は導入前の2倍近くに増えた。現在ペッパーは16店に出勤。話しかけたり、記念写真を撮る人が引きも切らない。

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