テントウムシをゾンビ化し操る「恐怖の虫」の正体 体内を食い荒らし、脳をウイルスでのっとる

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テントウハラボソコマユバチは、テントウムシに卵を産みつける。それと同時に、相手をおとなしくさせる化学物質を注入することが以前からわかっていた。しかし、そのほかにも何かがテントウムシの脳に「全力でマユを守れ!」という命令をあたえているはずだ。そしてゾンビ兵士のように行動させている。

テントウハラボソコマユバチ(画像提供:KADOKAWA)

テントウムシを操っているものとは、いったい何だろう?

昆虫学者を長く悩ませてきたその謎の答えは、最近になってわかった。テントウハラボソコマユバチは獲物のテントウムシに、化学物質と共に、ある種のウイルスを注入するのだ。

このウイルスこそが、テントウムシの脳を乗っ取り、ゾンビ化させる、いわば「生物兵器」だと考えられている。テントウムシを獲物にしたうえに、ウイルスであやつり、無防備なサナギを守らせるのだ。まったく天才すぎる方法だ。

2億年以上の時間をかけて進化した

テントウハラボソコマユバチが、なぜそんなことをするかというと、子どもを確実に育てるためだ。

『天才すぎる生き物図鑑』(KADOKAWA)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

草の汁をすするより、ほかの生き物をエサにしたほうがいい。栄養をたくさん子どもにあたえられる。それに気づいた寄生バチの祖先は、いつしか「獲物を狩る」という技を持つようになった。

それだけでも天才的なのに、さらにその獲物をあやつれるところまで、2億年以上の時間をかけて、進化した。このはてしなく長い時間の前には、もはやワルも何もない。テントウハラボソコマユバチはとても小さいが、その狩りの技は大きな大きな奇跡なのだ。

テントウハラボソコマユバチに寄生されたテントウムシは、だいたい死んでしまう。だが、中には復活するものもいる。これまた奇跡に思えるが、その中には、ごていねいにも、再びテントウハラボソコマユバチに寄生されてしまうものもいるという。「テントウムシは幸運のシンボル」などと、いったい誰が言ったのだろう?

早川 いくを 著作家

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はやかわ いくを / Ikuo Hayakawa

1965年東京都出身。多摩美術大学卒業。「へんないきもの」シリーズがベストセラーとなり本格的な作家活動に入る。著書に『うんこがへんないきもの』(KADOKAWA)、『怖いへんないきものの絵』(幻冬舎)など

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