飛行機で200万マイル貯めて宇宙旅行という裏技 一般の人が宇宙へ行く道のりはまだまだ険しい

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ところが2014年に同社は日本路線から撤退。また、現時点では200万マイル貯めても宇宙旅行に行く「抽選の権利」を得ると条件が下がってしまっている。

同社は抽選の倍率を公開していないが、大激戦にはならないと想定される。この抽選のエントリーのために必要な200万マイルは、ヴァージン・アトランティック航空で貯めたフライトマイルのみが対象。同社はANAと提携しているが、ANAで200万マイル貯めても対象外である。

では、200万マイル貯めるにはどのくらいの費用がかかるのだろうか。同社の最上級会員であるゴールド会員になったと仮定すると、フライトマイルの60%増しでマイルが加算される。なお、ヴァージン・アトランティック航空は同社が指定する航空会社のマイレージ上級会員であれば、同社の上級会員とするステータスマッチも実施している。

なお、ステータスマッチとは、マイレージプログラムなどで、ライバル社の上級会員に対して、無条件ないし、一定の条件を課して自社の上級会員とする優遇制度である。

ハードルはなかなか高い

いずれも他社の最上級会員から同社のゴールド会員への移行が条件だが、同社によると、過去にはユナイテッド航空やデルタ航空のゴールド会員(最上級会員ではない)からヴァージン・アトランティック航空のゴールド会員へ移行できた事例も報告されており、チャレンジする価値はある。

さて、ゴールド会員となったとしてもハードルが高い。まず、日本路線に就航していないので、ひたすらイギリスと第三国の間を往復する必要がある。ビジネスクラスが比較的安いのがロンドン発シアトル往復で総額約24万円、3万0675マイル獲得できる(Zクラスの場合)。合計66往復で200万マイルに到達する。1回24万円とするとトータルのコストが1584万円だ。

かなりの搭乗回数と金額がかかり、抽選もあるので確実に宇宙に行けるわけではないが、外れたとしても世界中のさまざまな行き先への特典航空券にかえることができるし、マイルの期限もない。ヴァージンをよく利用する人にとってはコツコツ貯めて宇宙旅行を目指せるので悪くない話ではないだろうか。

ちなみに抽選への応募は同社で貯めたマイルが必要だが、貯めたマイルはANAで使うこともできる。9万マイルあれば、成田とホノルルを結ぶANAのA380フライングホヌのファーストクラスの往復特典航空券を発券できるので、東京とハワイのファーストクラスを22往復することができる。

本来の宇宙旅行なら2750万円のところが、42%引きの1584万円(滞在費などは含まない)。抽選に当たれば晴れて宇宙へ、かりに外れてもハワイまでANAのファーストクラスを利用して22往復できる(諸経費は別途必要)と考えれば、負けることのない賭けともいえるのではないだろうか。

そんなにたくさん飛行に乗るのは無理……という人には別のチャンスがある。リチャード・ブランソン氏は、7月11日に宇宙から帰還した後、抽選で2名分の無料宇宙旅行を提供することを発表した。これは、チャリティーサイトOmazeを介するもので、誰でも応募資格はあるが、寄付金額が高くなるほど、当選確率も高まる。締め切りは2021年9月1日、フライトは商用宇宙旅行が開始される2022年の初めとしている。

PDエアロスペース社が拠点とする下地島空港。同社は将来的に39万8000円での宇宙旅行実現を目指している(写真:BUZZ-KATO/PIXTA)

なお、「日本発」の宇宙旅行の計画もある。エイチ・アイ・エスやANAホールディングスなどが出資するベンチャー企業、PDエアロスペース社は、下地島空港(沖縄県宮古島市)を「宇宙港」にして2025年ごろに有人飛行実現を計画している。

同社によれば、フライトの所要時間は90分、無重力状態は約5分となる。

滑走路から離着陸する「宇宙飛行機(スペースプレーン)」は、ロケットエンジンとジェットエンジンの切り替え可能なエンジンの開発などクリアしなければならない課題は多いが、乗客は6名で料金は1人あたり1400万~2000万円をめざしており、実現すればヴァージン・ギャラクティックよりも「格安」となりそうだ。

橋賀 秀紀 トラベルジャーナリスト

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はしが・ひでき / Hideki Hashiga

東京都出身の50代。早稲田大学卒業。「3日休めれば海外」というルールを定め、ほぼ月1回の頻度で海外旅行に出かける。訪問国は130カ国。共著に『エアライン戦争』(宝島社)など。『週刊東洋経済』で「サラリーマン弾丸紀行」を連載した。Yahoo!ニュース エキスパート。記事の内容についてのお問い合わせ・取材の依頼などについてはこちらまで。

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