太陽光パネルと土砂災害、解明迫られる因果関係 盛り土や建設残土の問題と併せて総点検が必要だ

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降雨時の水の流れに対応しきれていないのではないか、と思われる例が最近あった。「埼玉・日高『メガソーラー法廷闘争』が招く波紋」(2021年2月6日配信)で取り上げたが、埼玉県嵐山町のケースでは、昨年10月に大雨が続いた後に太陽光パネルが敷かれた場所の斜面が崩れた(この場所の復旧工事は今年5月末に終了した)。

嵐山町の写真をドローンで撮影した東京電気管理技術者協会千葉支部長の鈎裕之さん(54歳)によると、太陽光パネルや架台など太陽光発電施設は無傷なのに、そのそばで地盤が崩れたケースはほかにもある。

太陽光発電施設は無傷だが、そばの地面が崩れた(写真提供:鈎裕之さん、静岡県函南町で2020年3月撮影)

優良事例でも地盤が崩れた

地域の住民とトラブルになっているところだけではない。千葉県匝瑳市には、地域住民や自然との共生が実現しているソーラーシェアリングという優良事例がある。そこでも2017年に周辺の地盤が崩れた。「太陽光パネルを建てたもともと畑だった場所は、土がふかふかで雨を吸い込みやすい。設置工事に伴い、周りを重機で固めたとき、土が一部硬くなり水を吸いにくくなる。そうしたことで、一カ所に水が集まり、被害が出た」と鈎さんは説明する。

地盤の中の水の流れ方が、ポイントらしい。数年前からそれがわかってきた。

経済産業省は今年4月1日、「発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令」を制定した。省令は第5条で「施設による土砂流出または地盤の崩壊を防止する措置を講じなければならない」と定めている。

鈎さんに省令制定の意味を解説してもらった。「電気事業法という法律があり、技術基準の順守規定がある。これまでは、もっと具体的にそれはこういうことを言っているんですよ、とお役所が説明する『解釈』の中に、土砂流出防止について書かれていた。それが省令に格上げされた、つまり規制強化されたということです」という。

経産省の電力安全課によると、技術基準が省令になったことで、事業者に対し、報告徴収を求めたり、立ち入り検査を行ったりすることが可能になり、監視の目が届きやすくなる。

国の制度改正は、2010年代半ば以降、中山間地域の丘陵地や里山、谷津などに太陽光パネルを敷き詰める例が増えたことが背景だ。こうした事業は多くの場合、「林地開発許可」が必要になる。林野庁によると、林地開発許可件数のうち、太陽光発電事業を目的としたものは、2012年度に32件だったが、2013年度に124件、2014年度255件と増加した。

次ページ背景には、山の中腹など傾斜地の太陽光パネルが問題化
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