関係者の尽力もあり、Aさんは2020年4月末に都内の病院に無事転院することができ、その後数カ月で退院し、今は薬もいっさい飲まず普通に自宅で生活している。児童養護施設にいる2人の娘と暮らせるよう、児相とも話し合いを続けている。
ただし、一時の大量の服薬の影響か、不眠症には悩まされているという。それ以上に、最後まで納得いく説明のないまま、3年近くも自身を、まるで「収容」したかのような主治医の行為への恨みは深い。
「かわいい盛りの子供たちとも会えなかった、この貴重な時間を返してほしいです」(Aさん)
どちらが患者かわからない状態
アルコール依存症で、2015年秋から3年ほど報徳会宇都宮病院に入院していた60代男性BさんもAさんと同じ主治医だった。
「正直、主治医と私のどちらが患者かわからない状態でした。かなりの高齢の割に声は大きかったですが、患者の名前は覚えてないし、診察でも毎回同じ話を繰り返すばかりで」
Bさんも病名はAさんと同じく「非社会性パーソナリティ障害」だと告げられ、薬についても詳細な説明がないまま、朝晩それぞれ10錠前後の服用が求められた。「抗精神病薬や抗不安薬が中心だったようですが、そのうち退院後の現在でも服薬しているのは、整腸剤のビオフェルミンだけです」(Bさん)。
非社会性パーソナリティ障害は個人的利益や快楽のために搾取的行為を行っても、相手をバカだった無力だったと責め、良心の呵責を感じないこと、などが症状だとされる。なぜ主治医の診察からそうした病名に至ったのか、今でもまったくわからないとBさんは憤る。
「この主治医は診察時、周囲に聞こえるほど大声、しかもべらんめえ口調で、『50歳過ぎて寝小便をもらすんかい』などと、よく患者を笑いものにしていました。私も妻子と別れたことを告げると、『おう、おう、じゃあ俺が探しとくから』と気安く請け負って、すぐに忘れてしまったり。人の気持ちが全然わからない、というか、むしろされたら嫌だなと思うことを積極的にしていたようにも感じます」(Bさん)
Bさんも、この高齢の主治医は患者や病院職員の間で、「オー先生」「オードクター」と呼ばれていたと振り返る。「その名称の由来は諸説あり、『おう、おう』というのが口癖だからという話もありますが、やはり『オーナー』だからじゃないでしょうか」(Bさん)
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