当日は、都内のあるメンタルクリニックで簡単な診察を受けた後、福祉事務所の職員とともに、そのままタクシーで栃木県へと向かった。宇都宮市内の病院に到着したときには、すでに日はとっぷりと暮れていた。
「病院のロビーでは、かなり高齢の男性たちが談笑していました。患者さんかなと思ったら医師で、私の顔を見ると白衣を着て診察室に入っていきました」(同)
Aさんの主治医となったこの高齢の医師は、「口調は乱暴で、とにかく人の話を聞こうとしない人だな、というのが初診時の第一印象でした」(同)。15分ほどの診察で、病名を明確に告げられることもないまま、女性用の閉鎖病棟への入院が決まった。
入院当初から多くの薬が処方され、看護師の目の前で服用するよう求められた。薬効が強いためかふらつき症状がでたため、減薬やそもそも何の薬を投与されているのか知りたいと求めたが、主治医には「そんなことは知らないでいい」「薬はこちらが決める」と突き放されるだけだった。
Aさんは入院後しばらくして渡された通知書を見て、主たる病名は「非社会性パーソナリティ障害」、入院形態は精神科特有の強制入院制度の「医療保護入院」であることを知ったが、薬についてと同じく、主治医から診断や強制入院の理由が示されることはなかった。
主治医の言動に翻弄される日々
自筆の日記を見ると入院期間中、Aさんは常にこの主治医の言動に翻弄されていたことがわかる。退院前の数カ月間の記載だけでも下記の通りだ。
「令和2年(20年)2月25日(火) 王(オー).Dr(主治医の事)の診察日。オーマイゴッド。王.Dr診察だ……何を言われるんだろう?」
「(同上) 王.Drに『45歳ぐらいの男を紹介する』と言われ嫌な気分になった。あんなの診察じゃない。早くこの病院から姿を消したい」
「令和2年3月24日(火) 王.Dr診察日。転院の話になっているのに今日診察でグループホームの話をしてきた。やっぱり転院の事は頭に入ってないんだ」
「令和2年4月2日(木) 今日王先生に『オマエの頭はオレが直すんだから、他に行くな!!』みたいなことを言われてショック」
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