躍進を遂げる韓国から日本が学ぶべきこと

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 軽トラックの輸入関税は25%と高いが、韓米のFTAが発効しても、関税全廃まで10年かかる。韓国企業がアメリカ向けの軽トラックの生産に本格的に取り組めば状況は変わってくるが、それは先の話である。韓国企業は、アメリカ市場向けのSUV(スポーツ多目的車)やピックアップトラックを開発するのに約5年かかると言っている。

一方、来年1月に発効が予定されている韓国とEUのFTAは、日本企業に大きな影響を与えるはずだ。韓国の欧州への輸出額は、1980年には日本の対欧輸出の14%にすぎなかったが、現在は53%にまで増加している。FTAによって、韓国とEUの貿易額は現在の年間1000億ドルから、毎年、数百億ドルずつ上乗せされる可能性が高い。これにより、韓国の自動車企業とエレクトロニクス企業はEU市場での競争力を強めるだろう。

他方、EUは日本との経済提携協定(EPA)の交渉を延期している。その理由としてEU側は、「EU企業が日本のマーケットに参入するために必要な規制改正をする気が日本政府にない」点を挙げている。

日韓のもう一つの競争分野は中国である。韓国の対中輸出は、91年は日本の輸出額の12%であったが、現在は73%にまで上昇している。60年時点では、名目GDPに占める貿易額は日韓双方とも20%程度だった。しかし現在、同比率が韓国ではGDPの107%にまで増えているのに対して、日本はわずか30%である。貿易が増えている国の経済成長率は高くなることを歴史は証明している。今こそ日本は韓国の経験から学ぶべきである。

(週刊東洋経済2010年6月5日号)

Richard Katz
The Oriental Economist Report 編集長。ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ等にも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。当コラムへのご意見は英語でrbkatz@orientaleconomist.comまで。

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