アマゾンが会議でパワーポイントを使わない理由 ナラティブを書く「暗黙知」の顧客視点が強み

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ナラティブの起点はパーパスにあると本田氏はいう。パーパスは直訳すると「目的」だが、最近は企業やブランドの「存在意義」の意味で使われる。「何のために存在するのか」の問いに答える「創業者や企業の強い思い」からナラティブは始まる。

『ナラティブカンパニー』では、ソニーが2019年に定めたパーパスの事例が紹介される。

「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」――このパーパスが表れるソニー製品の代表格は、2018年1月11日(ワンワンワンの日)に発売された2代目の犬型ロボット「aibo」だろう。aiboの公式サイトを開くと、こんなキャッチコピーが目に飛び込んでくる。

「目を合わせた瞬間、すべてが始まる」

本田氏が示した要件に照らし合わせると、これはナラティブなのか。

筆者はaiboのプロジェクトを取材し、ビジネス誌に開発プロセスについて寄稿したことがある(それは企業ストーリーになる)。aiboのコンセプトは次のようなものだった。

「オーナーとのインタラクションを通じてともに成長する唯一無二の存在になる」

aiboは、体の各所に埋め込まれたカメラ、マイク、各種センサーなどで外の情報やオーナーの声などを取り込む。そして、人間の脳をモデルにしたAI(人工知能)が状況を認識し、知的処理を行い、行動を選択し、動きをつくり出す。喜怒哀楽の感情表現も可能で、目、声、体の動きで示す。

オーナーと「ともに成長する」

こうして、aiboはオーナーとやり取りしながら、どんな行動をとったらほめられたか、逆に叱られたか、学習を積み重ねて成長し、その個体ならではの個性を身に付けていく。

では、「ともに成長する」とはどういうことか。aiboは、オーナーの指示とは違った行動をとって、自分の意思を示すこともある。するとオーナーは、「本当はこんなことをやりたかったのか」と感情移入する。これは相手を「おもんぱかる」行為で、この経験の積み重ねにより、オーナーも相手を思いやる精神的な余裕を持てるようになれば、ともに成長していくことになる、というわけだ。

「目を合わせた瞬間、すべてが始まる」の「すべて」とは、「唯一無二の存在であるaiboとともに成長していく暮らし」にほかならない。

「演者」は、ソニーが創造性と技術力をつぎ込んだaiboとオーナー(生活者)。

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