アマゾンが会議でパワーポイントを使わない理由 ナラティブを書く「暗黙知」の顧客視点が強み

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実は、筆者も2020年に上梓した野中郁次郎・一橋大学名誉教授との共著『共感経営』の中で、ナラティブの概念を示したことがあった。企業戦略、事業戦略、商品開発戦略など、戦略の観点から「ナラティブ・ストラテジー(物語り戦略)」の重要性を提起した。分野こそ違え、ともにナラティブの概念に行き着いたのは、共通する時代認識があったからだろう。

「今、なぜ、ナラティブが求められるのか」――その現代的な意義について考えるのが本稿のねらいだ。

ナラティブとストーリー、3つの違い

まずは、『ナラティブカンパニー』に沿って、企業コミュニケーションにおけるナラティブの概要を見てみよう。本田氏は、ナラティブとストーリーは大きく次の3つの点で異なるとする。

1 「演者」の違い
2 「時間」の違い
3 「舞台」の違い

第1に「演者」。ストーリーについては、テレビ番組「プロジェクトX~挑戦者たち~」や「ガイアの夜明け」で紹介される企業ストーリーを思い浮かべるとわかりやすい。主人公はあくまでも「企業」であり、「あなた(生活者=顧客、ユーザー)」は聴衆になる。一方、ナラティブにおいては、「あなた」も主人公の1人であり、演者として物語に参加する。

第2に「時間」。ストーリーには「起承転結」があり、「終わり」がある。これに対し、ナラティブには終わりがなく、つねに現在進行形で、未来も内包する。

第3に「舞台」。ストーリーの舞台は、その企業が属する業界であったり、競争相手との競合環境であったりする。一方、ナラティブでは、顧客、企業のほか、社員、取引先など、多様なステークホルダーも演者になりうるので、「社会全体」が舞台となる。

このようにナラティブとストーリーの違いを示したうえで、ナラティブとは「物語的な共創構造」であると定義する。これは少し説明が必要だろう。

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