中国のネット配車「滴滴」米国上場に漂う不安 2012年の設立以降ずっと赤字が続いている

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滴滴は上場先としてニューヨーク証券取引所を選んだ(写真は同社ウェブサイトより)

6月30日、中国のネット配車サービス最大手の滴滴出行(ディディ)がアメリカのニューヨーク証券取引所に上場した。

ADS(アメリカ預託株式)の発行価格は1単位当たり14ドル(約1550円)で、合計3億1700万単位が発行された。発行価格から算出した時価総額は670億ドル(約7兆4194億円)を超える。なお主幹事証券会社が4700万単位のオーバーアロットメントを行使した場合、滴滴の資金調達額は最大で51億ドル(約5648億円)に上る。

滴滴の上場初日の取引は発行価格を19%近く上回る、16.65ドル(約1844円)で寄り付いた。だがその後は急速に値を下げ、終値は発行価格を1.43%上回る14.2ドル(約1572円)だった。

同社のIPO(新規株式公開)に対し、市場関係者の評価は割れている。ある機関投資家は、2017年以降、滴滴のネット配車事業の受注数はほとんど伸びていないことから、この発行価格は「高すぎる」と語った。一方で別の機関投資家は、「滴滴は中国のネット配車市場を事実上独占しており、将来の利益確保は難しくない」と話し、バリュエーションは高くないとの認識を示した。

2021年3月31日までの12カ月間において、滴滴の中国の年間アクティブユーザー数は3億7700万人、年間アクティブドライバー数は1300万人に上った。なお、同時期の全世界における年間アクティブユーザー数は4億9300万人、アクティブドライバー数は1500万人だった。また2021年1~3月期の、中国における月間アクティブユーザー数は1億5600万人で、1日当たりの平均利用回数は延べ2500万回に達している。

ネット配車以外にも多角化

滴滴は2012年の設立で、ネット配車以外にも、タクシー、シェアサイクル、個人向けの自動車リースやメンテナンス・サービス、物流、金融、自動運転技術開発など多数の事業を展開している。地域のコミュニティー向けオンライン共同購買サービスの「橙心優選(チャンシンヨウシュエン)」も運営しているが、(競争激化で収益化のメドが立たず)事業リスクが高まりつつあることから、連結対象から除外された。

本記事は「財新」の提供記事です

滴滴は設立以来9年間、一期も黒字を達成できていない。2020年の売上高は前年比8.4%減の1417億元(約2兆4287億円)で、純損益は106億元(約1817億円)の赤字だった。2021年1~3月期は55億元(約943億円)の純利益を計上したが、これは主に、橙心優選のスピンオフ(事業の分離・独立)に伴う一次的な投資収益によるものだ。それを除くと、1~3月期はなお67億元(約1148億円)の赤字だった。

(訳注:原文記事の配信後の7月4日、中国の規制当局である国家インターネット情報弁公室は、個人情報の収集や利用に重大な違反があるとして、滴滴のアプリのダウンロード停止を命じた)

(財新記者:銭童)
※原文の配信は7月1日

財新 Biz&Tech

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