法人税率「最低15%」の国際基準が議論される意味 G7が合意、実現すれば「地殻変動」起こるのか?

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もっとも、その一方でトランプ前政権の離脱の影響を受けて、世界では「デジタル課税」という形で、これまで単独で課税してきたところも少なくない。たとえば、「デジタル売上税」という形で、売り上げに対して課税する国もあった。

最も早かったフランスは2019年7月に、オンライン広告やプラットフォームの提供に対して3%の売上税を課税。2020年1月には、イタリアがオンライン広告、プラットフォームに加えて、ユーザーデータ販売に対しても3%の売上税を導入している。オーストリアでもオンライン広告の売り上げに対して5%の課税を実施した。2020年4月には、イギリスがオンライン広告とプラットフォームに2%課税している。

加えて、バイデン政権は不公正な取引を監視する「アメリカ連邦取引委員会(FTC)」に、巨大IT企業への批判で知られるコロンビア大学の女性准教授であるリナ・カーン氏を委員長に就任させた。彼女のFTC委員長就任は、GAFAによる市場独占に対して厳しい姿勢が取られることを意味している。

また、アメリカの下院議員の超党派議員団は6月11日、GAFAに対する「事業分割強制などを視野に入れた法案」を提出。大手のプラットフォーム業者に対して、独占的な事業システムの中で「利益相反」等が起きた場合、そうした事業の所有や支配は違法になる、と明記されている、とウォールストリートジャーナルが伝えている。

課税ルールの変更がもたらす変化とは?

なぜ、これまで実現しなかった国際課税ルールの変更が、ここにきて実現に向けて大きく踏み出せたのか。その背景には、やはり新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が大きい。どの国でも、ロックダウンを余儀なくされ、経済成長を止めざるをえなかったうえに、休業補償やワクチン接種、入院設備の整備等によって莫大な財政支出を余儀なくされた。

IMF(国際通貨基金)が20201年1月28日に公表した財政報告によると、新型コロナに関連した世界各国の経済対策は2020年末時点で、総額13兆8750億ドル(約1443兆円、1ドル=104円で計算、以下同)に達している。アメリカは4兆0130億ドル、日本は世界第2位の2兆2100億ドル(約229兆円)となっている。それ以外の国では、ドイツ1兆4720億ドル、中国も9040億ドルの財政出動を実施している。

多くの国でロックダウンやそれに準じる措置を余儀なくされて経済成長を止めざるをえなかったうえに、休業補償やワクチン接種、入院設備の整備などによって莫大な財政支出を迫られた。加えて日本では、医療資源の整備などに回さずに「GoTo トラベル」などの景気対策で感染者数の割には財政出動を増やした。

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