法人税率「最低15%」の国際基準が議論される意味 G7が合意、実現すれば「地殻変動」起こるのか?

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業務委託というスタイルのために、利益のほとんどがアメリカの本社に吸い上げられて、日本では相対的に少ない法人税しか払わなくてもいいレベルの利益しか残らない仕組みになっている。巨大IT企業は、こうした方法で利益を上げた国で税金を抑える方法を続けてきた。

もっとも、アマゾンは2016年5月に通販業務を支援する会社と物流機能を担う会社が統合されて設立されたのを機に、2017年12月期以降、日本法人が取引の契約主体となって、日本法人に売上高を計上する方針に転換したと東京新聞が2019年12月23日付のWeb版で伝えている。

法人税の額は、2017年、2018年ともに百数十億円を納付したと報道している。アマゾンが日本でいくら法人税を支払ったかが明確にわかる年は、2014年しかないともいわれている。また、クラウド事業や動画、電子書籍などの売り上げは、依然として米国法人に計上されている。

そのアメリカや欧州でプールした利益も、タックスヘイブンに移転することで法人税を抑えている。

こうしたビジネスが、少なくともここ20年程度の間、放置されてきたこと自体が驚きだが、その背景にはさまざまな国のさまざまな勢力の利害関係があるようだ。

最低税率15%+現地納税は実現するのか?

さて、そんないびつな国際課税ルールも大きなイベントの前には変化せざるをえない。実際に、国際的な課税ルールが前回変わったのは第1次世界大戦の終わりと言われている。復興財源不足に悩んでいた欧州諸国が、第1次世界大戦で莫大な利益を上げた「戦争成り金」の企業に、超過利得税や戦時利得税として新たに課税したのだ。課税ルールの大きな変更には、世界大戦のようなインパクトのあるイベントが必要だったということだ。

その後100年、世界は新型コロナウイルスと言うパンデミックに見舞われて、ここに来てやっと国際課税ルールを変更する環境が整ってきたと言っていいだろう。

GAFAの台頭に象徴される経済のデジタル化は、世界中の貧富の格差を拡大させ、勤労者との公平性を損なってきた。儲けたお金で宇宙旅行をするのは構わないが、地上に残された勤労者や消費者にとっては、複雑な気持ちになるはずだ。

こうした国際的な課税ルールの整備はずいぶん前から準備はされていた。それをぶち壊したのが一方的にルール作りから離脱したトランプ前アメリカ大統領だが、彼を信奉するアメリカ共和党の政治家の中には、こうした国際ルール作りにいまだに反対する人も多い。

実際に、共和党はこの合意案を成立させると、アメリカの海外での経済競争力を低下させ、税制面での決定権を独占できなくなるとして強硬に反対している。

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