法人税率「最低15%」の国際基準が議論される意味 G7が合意、実現すれば「地殻変動」起こるのか?
2015年にOECDが試算したデータによると、巨大IT企業は世界の法人税の4~10%に相当する1000億ドル(約11兆円)から2400億ドル(約25兆円)に上る税負担が回避されているといわれる。
もともと法人税率引き下げ競争の背景には、デジタル経済の進展と同時に、民主国家と独裁国家との経済戦争、貧困格差の拡大、暗号通貨の普及などなど……、さまざまな要因があるといわれている。
世界各国は無形資産への課税方法が確立できておらず、その一方で電気や自動車、機械、化学、素材エネルギーといった製造業関連の税負担率の平均はGAFAの2倍になっている。日本経済新聞(5月9日付朝刊)の報道によれば、これら5業種の負担税率の平均は30.7%だとしており、15.4%のGAFAの2倍となっている。
たとえば、グーグルが2017年に行った節税法は、オランダのペーパーカンパニーを通じて199億ユーロ(約227億ドル)の資金をタックスヘイブンとして知られる「バミューダ」に移転していた方法が知られている。これは、「オランダ商工会議所」への提出文書で明らかになったものでロイター(2019年1月4日)が報道している。
具体的には、アメリカ以外で得たロイヤルティー収入を、オランダの子会社「グーグル・ネザーランド・ホールディングス」を通して、所得税のかからないバミューダに拠点を置く関連会社「グーグル・アイルランド・ホールディングス」に送ることで、アメリカの所得税や欧州の源泉税を回避してきた。「ダブル・アイリッシュ・ダッチ・サンドイッチ」と呼ばれる租税回避の方法だが、関係国からの圧力で現在では使えなくなっている。
もっともグーグルは、ほかの多国籍企業と同様に本国=アメリカで法人所得税の大部分を支払っている、と反論している。過去10年間に実効税率26%の税金を払ってきたと主張する。
日本がアメリカ巨大企業に強く課税を迫れない事情
アマゾンもよく日本で法人税を払っていないと批判されてきた。たとえば2009年に東京国税局はアマゾンに対して140億円前後の追徴課税処分を行ったものの、最終的にはアメリカとの「二国間協議」となり、東京国税局は追徴課税処分を取り下げる形になっていると報道されている。周知のように、日米の二国間協議に持ち込まれれば、日本政府はアメリカ側に何も言えなくなってしまう。
不平等条約といわれる「日米租税条約」がある限り、日本政府はアメリカの巨大IT企業に対して強く課税を迫れないのが現実だ。ちなみに、アマゾンの日本での販売業務は、アマゾンの日本子会社である「アマゾン・ジャパン」と「アマゾン・ジャパン・ロジスティクス」が担当しているのだが、両者ともアマゾン本社から業務を委託されているという形になっている。
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