裏方としてなら僕にできることもあるんじゃないか?
驚いたのは、彼らが本ゼミと並行してカントをドイツ語で原書講読する自主ゼミまで立ち上げたことだ。こちらは本ゼミの課題図書を日本語訳で読むだけでもヒーヒー言っているというのに……。もちろん僕は自主ゼミへの参加を丁重に断った。
そんなゼミ仲間との議論はとても刺激的だった。アカデミックなことから、カルチャー方面まで話題はさまざま。難しくてわからないこともあったが、自分の知らないことや、新鮮な発想にあふれた会話は横で聞いているだけで楽しかった。この面白さを番組として再現できないだろうか? というのが、「Life」や「Session‐22」の番組コンセプトにつながっている。
自分の役割をぼんやりと意識し始めたのもこの頃だった。彼らのハイブラウな議論はとても面白かったが、そのままでは多くの人に聴かれる機会は少ないだろう。この面白さを社会に接続し、より広く発信する「場」を作りたい。裏方としてなら僕にできることもあるんじゃないか? そんな思いを抱くようになった。
國分くんのサークルの後輩で、『永続敗戦論』を書いた白井聡さんによると、僕はラジオに配属されたばかりの頃、フランス留学を控えた國分くんの壮行会で「いつか君たちが活躍するような番組を作るから」と宣言していたらしい(酔っていたのか自分ではすっかり忘れていた)。それから10年ほど経って、國分くんや白井さんにも自分が作った番組に出演してもらうことができた。
「初志貫徹」というほど意識的なものではなかったが、やはり学生時代の思いが心のどこかにずっと残っていたのだろう。学生気分で仕事はできないが、学生時代の気持ちが仕事の原動力になることもあるのだ。
構成:宮崎智之
☆★☆お知らせ☆★☆
この記事の筆者・長谷川裕氏がプロデューサーを務める「文化系トークラジオLife」が、6月22日(日)25:00~(6月23日1:00~)に放送されました!ポッドキャストでも聴けます。
「里山ウェブの時代」
「コンテンツの買い叩き」現象が目立つ今のウェブ環境は、「プロのクリエイター」であろうとする人たちにとって、まったく「おいしくない」ものになって います。ではどうするのかと考えたときに、ひとつの道としてあるのが、不特定多数の人たちに作品をばらまくのではなく、自分の作品の価値を理解してくれる 人のところにきちんと届くような流通手段をとること。最近話題の「里山資本主義」の話に近い、いわば「里山ウェブ」とでも言える動きです。クリエイターと 受け手のよい関係を目指す動きとして登場してきている『里山ウェブ』。あなたは支持しますか?
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