ウォール街は、法改正による規制だけでなくカジノ的体質の改善こそ必要

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 (4)銀行の自己資本比率を引き上げて、借入金に過剰に依存するレバレッジ投資に厳しい制限をかける。

(5)ノンバンクは、往々にして監視の目を逃れているが、これらを規制当局による監督の射程内に置く。

(6)消費者保護機関を(おそらくFRBの中に)創設することによって、不正な住宅ローン融資会社や、とてつもなく高い金利を課すクレジットカード発行会社から借り手を守る--。

デリバティブを規制当局の監督下に置くことになれば、画期的だ。デリバティブにも正当な役割はある。たとえば、商品先物市場が存在するおかげで、農家は穀物価格を確定できる。しかし、ウォール街は、さらに複雑化した金融商品を開発することにより、市場を堕落させた。このような金融商品は、投機やギャンブルに近いものだった。ウォール街は、デリバティブ市場の規制に断固反対している。

実際のところ、法律がなかったために08年の金融危機が発生したわけではない。銀行の帳簿を綿密に調査し、財務の健全性を確保し、住宅ローン融資業務の健全性を強く求めるのに必要な権限を含め、規制当局は危機の防止に必要な手段をすべて備えていた。にもかかわらず、規制緩和を主張する熱心な自由市場論者たちにおそれをなしたせいか、手段を活用しなかったにすぎない。

金融業界は、一連の規制緩和にあおられて景気づいたが、SECなどの規制機関の決断と有効性に陰りが見られるようになると、ついには破滅的な状況を引き起こすに至った。

IMFの元チーフエコノミスト、シモン・ジョンソン氏によると、民主・共和両党が推進してきた主な規制緩和策は以下のような内容だ。すなわち、国境をまたぐ資本の自由な移動の促進、グラス・スティーガル法の破棄、デリバティブに対する規制の拒否、金融サービス業界に対するSECの監督機能を実質的に消滅させること(その最悪の結果として、SECはバーニー・マドフによるネズミ講を暴露できなかった)などだ。金融機関の技術革新によって従来からの規制の有効性が損なわれつつあったにもかかわらず、連邦議会および規制当局は金融市場を統治する規制の近代化を怠った。

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