なぜ、「働けない若者」が増えたのか 『無業社会 働くことができない若者たちの未来』を読む
本書に登場するいくつかの個別事例を読んでいると、無業状態に陥るまでのプロセスが、実にさまざまであることに気づかされる。資格試験に挑戦して勉強していた期間が履歴書の空白期間となってしまい、資格を諦めた後の就職活動が暗礁に乗り上げてしまった例。大学在学中からアルバイトをしていた会社に認められて正規雇用になったものの、会社の経営が悪化してリストラされてしまった例。有名私大を卒業後、飲食店チェーンに就職したが労働条件が事前に聞いていたものと全く違い、上司との軋轢が増して退職に追い込まれた例などなど。
これらをどう捉えるかは、さまざまかもしれない。中には「もう一踏ん張りできないか」と感じるむきもあるかもしれない。世の多くの人々はみんな「頑張っている」。自分は頑張っているという自負があると、「あなたももっと頑張りなさいよ」と言いたくなる。が、人間はいつもいつも機械のように同じペースで生きられるわけではない。体や心が弱くなるときもあれば、運や縁に恵まれないときもある。判断を誤るときもある。そういう「人生のボタンの掛け違い」は誰の身にも起こりうることにもかかわらず、やり直すチャンスが極端に少ないことが問題なのだ。
幅広い世代が関心を持つべき問題
西田氏は言う。
“事実やデータは、「自分が現在、普通に生活できているのは、偶然の産物かもしれない」というような懐疑を持つのに、十分なものだった”
第一次安倍内閣のもとでは「再チャレンジ」をキーワードとして「内閣府特命担当大臣(再チャレンジ担当)」というポストが設置されたが、その後廃止されてしまった。状況はますます悪化しているにもかかわらず、政治も世論も関心を失ったかに見える。
が、「若年問題」は「子供のこと孫のこと」と思えば幅広い世代の問題でもあるのだ。私自身、まもなく成人する子供をもつ親として、身につまされつつ読んだ。
定量的な分析と、事例を通してこの問題を考える、恰好の入門編として本書をおすすめしたい。
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