世界の自動車メーカーの見通しを「ポジティブ」に変更《ムーディーズの業界分析》

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シニア・バイスプレジデント フォーク・フレイ
シニア・バイスプレジデント J.ブルース・クラーク
コーポレート・ファイナンスグループ VP・シニアアナリスト 臼井 規
VP・シニアアナリスト クリス・パークほか

ムーディーズは2010年5月18日、世界の自動車業界の見通しを「安定的」から「ポジティブ」に変更した。この見通しは、向こう12~18カ月の業界のファンダメンタルな信用状況に対するムーディーズの予想を表わすものである。

世界の自動車業界に対するポジティブの見通しは、販売台数、需要、価格のトレンドが年初の予想を上回るペースで改善してきたというムーディーズの見方を反映している。特に、中国とブラジルの販売台数が改善しており、西欧でもこれまでのところ予想より好調に推移している。米国は回復軌道にあり、日本は引き続き購入奨励策の恩恵を受けている。

ムーディーズは、10年の世界の自動車販売台数に関し、中国における力強い需要を主な理由として、基本シナリオの予想を引き上げる。現在、ムーディーズは10年の世界の販売台数を6760万台(対前年比5.5%増)と予想している。前回の予想は、6530万台(同2%増)であった。

西欧の販売台数に対するムーディーズの見方は改善したが、主に政府の新車購入奨励策の打ち切りを要因として、依然、減少が予想される。欧州の10年の販売台数について、前回予想の前年比15%減に対し、現在は前年比12%の減少を予想している。

需要増と在庫積み増しの効果によって、自動車メーカーの稼働率は改善し、収益性が向上するだろう。事業再編によって生産能力が大幅に削減された米国の状況は改善が進んでいる。しかし、欧州では、生産能力の構造的な変化はまだ見られない。全体として、10年の業界では、損益分岐点を下回る水準での操業が続くとみられる。

自動車メーカーには、価格と製品構成がより好ましい効果をもたらしている。小型車の販売を下支えしてきた政府支援による購入奨励策は、その大半が段階的に廃止された。消費者は、大型車や、高価なオプション付きで低燃費の小型車の購入に回帰している。

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