NHKの女性記者が過労死していたーー。世間を騒がせた公表から4年がたったが、まだ解決していない問題がある。
遺族は、「娘はなぜ死んだのか。真実を知りたい」と願い、NHK自らが検証番組を制作し、真相を伝えることを望んでいる。番組の実現を期待して、4年にわたり遺族を追った1時間のドキュメンタリー映画『未和 NHK記者の死が問いかけるもの』を5回に分けて公開する。
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「未和はNHKを愛していました」
2013年7月、NHKの記者がこの世を去った。佐戸未和(さど みわ)さん、享年31。東京の首都圏放送センターに勤務していた彼女が音信不通になったのは、参院選の取材を終えた3日後。不審に思い駆けつけてきた婚約者によって自宅で発見された。
翌年、渋谷労基署が過労死と認定しNHKは臨検を受けた。しかし、職員の多くはNHKで過労死が起きていたという事実を知らされず、遺族の声を受けNHKが外部公表したのは4年後のことだった。
この映画『未和』を監督することになった筆者は、フリーランスの映像制作者として長くNHKで働いている。公表後、記者の実家を訪ねると、「未和はNHKを愛していました。仕事に誇りを持っていました」と、母の恵美子さんが話してくれた。NHKを思う気持ちは、筆者も未和さんと同じだ。
「今まで見たことがない世界を見たい」と、NHKの就職申込書に書いた佐戸記者。
入局9年目。記者人生まさにこれから、という時に生を絶たれた無念さはいかばかりか。せめて彼女の記録を残したいと、筆者は関係者への聞き取りを始めた。その成果をまとめた書籍『未和 NHK記者はなぜ過労死したのか』(岩波書店)に続き、今年5月にこの映画が完成した。
この連載1回目の映像には、佐戸記者の携帯電話から見つかった動画が登場する。
「鹿児島局のみなさん、お久しぶりです。30歳を目前に脂身よりも赤身のおいしさに目覚めた佐戸です」
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