チャイナデファクト戦略を支える中国CASE革命 9大分野での強国戦略に日本はどう対応するか
「中国製造2025」「中国標準2035」を軸とする強国戦略を打ち出した中国は、2035年に総合国力で先進国に劣後しない水準に達し、近代化国家の形成を目指している。
その戦略の背後にあるシナリオは、巨大な自国需要を生かし、多くのテック企業が参入することにより、日米欧企業が寡占する産業・バリューチェーンを根底から再構築して、チャイナ・デファクトスタンダードを握ることだ。
なかでも、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared&Service(共有)、Electric(電動化)の頭文字をつなげた言葉である「CASE」は、中国の国家戦略を実現する一翼を担っている。
6月21日に刊行された筆者の新刊『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』はCASEやMaaSを軸とし、様々な角度から中国のモビリティ革命を描き、テスラ、フォルクスワーゲン、NIO(蔚来)を含む自動車メーカーや部品メーカー、CATLやBYDなど大手電池メーカー、大手テック企業から得た現場情報を踏まえて、日本企業の抱える課題についても解説した1冊だ。
今回は、同書籍から一部を抜粋・編集してお届けしたい。
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中国の「強国戦略2035」とは?
2012年の第18回中国共産党大会で提起された「2つの100年」は、習近平国家主席が設定した国家発展の時間軸だ。
1つ目の100年は、中国共産党結党から100年の2021年までに「小康社会」(ややゆとりのある社会)を実現するということで、国民に経済的な余裕だけではなく、精神的なゆとりや幸福感も実感させることにある。
2つ目の100年は、1949年に新中国が成立してから100年の2049年までに世界でも一流の軍隊を建設し、トップレベルの総合的国力を持つ近代化強国を目指すというものだ。
2020年10月に開かれた共産党5中全会で、習氏は内需拡大を軸として世界経済とも連携する「双循環」に転換する方針を示し、2035年までには経済規模あるいは1人当たりの平均収入を倍増させることが完全に可能だと述べた。
また、中国政府が公表した2021~2025年までの第14次5カ年計画では、アメリカとのハイテク技術をめぐる対立などを念頭に、「科学技術の自立」や「高付加価値製品の国産化」が強調されている。
2035年の目標では、中国は経済規模だけでなく、国際的影響力、軍事力、国民生活などすべての面において先進国に劣後しない水準に達するとした。国民生活の質を引き上げる前提となる経済発展は、政治目標を実現するためのカギとなり、政権の経済運営にとって極めて重大な任務となる。
そんな中、中国は「製造業強国」「自動車強国」「スマートカー強国」「交通強国」「知財強国」など主要9大分野で強国戦略を打ち出した。
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