チャイナデファクト戦略を支える中国CASE革命 9大分野での強国戦略に日本はどう対応するか

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主要9大分野での強国戦略で中国は、人材・技術・社会インフラを含む総合国力の向上を図ろうとしている。

こうした戦略を支えるのは「中国製造2025」及び「中国標準2035」を軸とするデジタル・イノベーションの促進、チャイナ・デファクトスタンダードの構築になるだろう。

あらゆるデジタル分野で国際標準を目指す

ドイツの「インダストリー4.0」やアメリカの「製造業の回帰戦略」を意味する製造業の高度化の動きに影響を受けた中国は、2015年5月、第4次産業革命の波に乗り遅れまいとして新たな戦略「中国製造2025」を打ち出し、ITと製造技術を融合するスマートファクトリーやデジタル・イノベーションの実現により、自動化や生産性の向上を目指している。

中国は2035年に“近代化国家”を実現し、2049年までにアメリカに匹敵する“近代化強国”になることが中国の夢である。

それを実現するためには、今後中国が世界市場でハイテクの争いを行うだけでなく、自国製品の規格を世界の標準規格として普及させる必要がある。すでに国際特許出願数で世界トップに立っている中国は、知財戦略を意識して、新たな国家戦略を打ち出した。

2017年の第19回共産党大会で、習氏は2035年に世界のイノベーション型先進国となる意志を示し、2018年には30年ぶりに「標準化法」を改正し、中国標準の国際標準への転換を推進している。

2021年には、「中国標準2035」プロジェクトの研究成果を踏まえた「国家標準戦略綱要」「国家知財戦略2035」(国家知識産権局策定)が公表されると見込まれる。

中国が取り組んでいるのは、世界市場に打って出るために必要な国際通用規格を策定することであり、AI、5G、自動運転、ビッグデータ、クラウド、デジタル通貨等の分野で技術を向上し、国際標準を目指すことだ。

「中国標準2035」戦略、「国家知財戦略2035」を軸とし、中国は2035年に向けて力強くハイテク産業の発展を推進していくと考えられる。 「メイド・イン・チャイナ」の家電・電子製品は日常的に目にするようになったが、今後は「メイド・イン・チャイナ」製品が、チャイナ・デファクトとして世界市場に浸透ししていくことになるだろう。

中国製造業の高度化を目指すためには、裾野が広く、かつ難易度が高い自動車産業の振興が極めて重要だ。

自動車産業では100年以上にわたり、内燃機関技術の進化を代表する持続的イノベーションのもとで、自動車メーカーが規模の拡大と質の向上を中心とした競争力の構築に努力してきた。

一方、これまで想定し得なかった変化の荒波の中で、次々と生まれる新技術が既存技術化し、CASEが自動車産業に革命を起こす条件が一層整ってくることになるだろう。

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