チャイナデファクト戦略を支える中国CASE革命 9大分野での強国戦略に日本はどう対応するか

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中国が次世代自動車技術での優位性や業界スタンダードを確立できれば、部品産業の技術進歩も期待でき、中国の自動車産業全体の競争力を向上させることができる。

そうなれば、電池などの基幹部品を低価格で量産しやすくなることに加え、巨大な国内市場、通信網の整備とスマートフォンの普及、貴金属資源の保有、部品・部材産業集積の存在などの面で日米欧を圧倒する条件が整う。

こうした勝算を前提に中国政府は「自動車強国」となる構想を描いている。

ただ、それを実現するためには裾野・部品分野を含む産業チェーンの発展、低燃費技術やコア部品の生産技術を獲得する必要がある。

新興EVメーカーのスマートカー工場(筆者撮影)

それと同時に最も肝心なのは、コネクテッド、自動運転技術などスマートカー分野に重点を置き、官民を挙げて研究開発を加速することだ。

CASE革命がもたらした産業構造の変化が、中国にとって国際標準化に向けた大きなチャンスとなっているのである。

日本企業はどう取り組むべきか?

今後、中国企業はさらなる進化を遂げ、車載電池、自動運転、制御システムおよびソフトウェアを手掛ける次世代自動車産業のメガサプライヤー、メガスマートカーメーカー、モビリティサービスを提供するプラットフォーマーが次々と登場することが推測される。

そうなれば、中国は「世界のEV生産工場」として、スマートカーやスマートシティ関連サービスの海外輸出を拡大する。中国のCASE革命で躍進するテック企業は新興国市場だけでなく、日本を含む先進国市場にも進出し、スマートフォンを介在するモビリティサービスを投入するだろう。

今後、一部の日本の製造業者はものづくりのメーカーからサービスを提供する事業者となり、モノづくりの競争優位を維持してきた日本の産業構造に変化がもたらされる可能性が高い。

『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

日本の製造業は過去にアメリカから技術を導入し、改良・改善を加えて世界に役立つ商品を次々と展開してきた。今でもアメリカと中国のメガテック企業は、世界をリードしていく新技術を多く展開している。

日本企業は、こうした企業を徹底的に研究・学び、自社にも役立つところは取り入れつつ、自社の競争優位を客観的に分析し、残すモノと捨てるモノを見極め仕分け、次世代産業で競争力の形成を図っていく必要がある。

自社の資源だけでは変革力の限界があり、外部資源の活用は不可欠であろう。こうしたダイナミックな業界変革により、モノづくりの発想とサプライチェーンも変化し、日本企業にはCASEの荒波を乗り越えていけば、新たなビジネスチャンスが訪れると思われる。

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湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、日本・中国自動車業界の知見を活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。中央大学兼任教員、専修大学客員研究員を歴任。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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