コロナ前の便利すぎる生活は戻らない日本の現実 「24時間営業の便利な生活」はもう諦めよう

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例えば、ロイヤルホストが24時間営業を廃止したのは2017年のことだった。1店舗当たりの営業時間を平均1・3時間短縮し、翌年には年中無休もやめて年3日の店舗休業日を設けた。

奇しくもこの2017年、ヤマト運輸もアマゾンの当日発送からの撤退を表明した。ドライバーの負担が過重となり、再配達の時間指定のシステムも一部変更された。人手不足によって「便利すぎるサービス」は、崩壊の兆しを見せていたのである。

ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長と対談した際、24時間営業をとりやめたのは、「人口減少時代に備えて従業員の働き方を見直すための方策」だと説明された。働き手の確保が難しくなったので、アルバイトをなるべく正社員として登用し、短時間勤務のスタッフはシフトを固定化したのだという。

24時間営業をやめたのに増収!

営業時間を短縮したのだから、当然売上は減るはずだ。予想では年間約7億円の減収を見込んでいた。すると驚くことに、24時間営業をやめたら、逆に7億円の増収になったのだ。念の為にいっておくが、コスト削減による増益ではない。売上が増えたのだ。

その理由について菊地会長はこう説明している。

「早朝・深夜の営業時間を短縮し、ランチとディナーのお客様が集中する時間帯に十分な数の従業員を配置することで、サービスの満足度や付加価値を高められたから」。ピークタイムでも人員配置に余裕があるので、「食後にデザートはいかがですか?」と一声かけることができる。そうした余裕が売上を伸ばしたのだという。

ロイヤルホストは「戦略的に縮む」の先端を行く企業の1つであり、率先して24時間営業をやめた事例だが、他の飲食店や業種を見ると、24時間営業にしがみついているところが大半だ。

その典型的な例がコンビニであった。深夜〜早朝の時間帯に働いてくれるアルバイトが集まらなくなると、外国人を雇い入れることで、ギリギリしのいできた。働き手の多くは専門学校や日本語学校などに通うアジア系留学生である。都心部では深夜にコンビニに行くと、店員が外国人ばかりという状況が、いつの間にか当たり前の光景となっていた。

業界最大手のセブン-イレブンでは外国人従業員が全体の約7.9%を占める(2018年)。これは全国平均のデータなので、首都圏ではさらに高い数字だろう。

そんなコンビニ業界も曲がり角を迎えている。加盟店側から悲鳴が上がったためだ。2020年2月には経済産業省の有識者会議が一律の24時間営業を見直すようコンビニ各社に求める提言書をまとめたこともあり、コロナ禍前から一部で「脱24時間」の動きは拡がり始めていた。

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