「街角ピアノ」に見るSA×ストリートピアノの妙 音楽がつなぐ人・街・地域。浜松SA設置のピアノ

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サービスエリアのストリートピアノは、過去の設置も含め、浜松SA以外にも何カ所かある。九州自動車道の古賀SA(福岡県古賀市)と名神高速道路の大津SA(滋賀県)には、期間限定で設置されたことがある。

東名の富士川SAに併設されている道の駅「富士川楽座」(静岡県富士市)の展望ラウンジにも昨年8月、ヤマハのピアノが設置された。ここも高速道路と一般道の両方から利用できる施設である。

また、高速道路の休憩施設ではないが、NEXCOが高速道路外に初めて作った大型商業施設「テラスゲート土岐」(岐阜県土岐市・東海環状道土岐南多治見IC近く)にも、今年の大型連休から期間限定でストリートピアノが置かれている。

NHKの番組の影響もあってか、あるいはストリートピアノでの即興演奏をYouTubeに動画投稿して一躍有名になった「ハラミちゃん」人気も貢献しているのか、ストリートピアノを目にする機会は増えている。

SA、PAは新たな地域の核に

話を浜松SAに戻すと、番組で紹介された演奏者は17組。うち、8組が地元浜松の市民であった。その立地からハイウェイをドライブする人ばかりが利用していそうに思えるが、番組制作者のセレクトがあったとはいえ、実に半分近くが地元の人であるのに驚いた。

浜松SA(下り)に設置されたミュージックスポット(写真:中日本エクシス)

番組では、サービスエリア内に設置されているドッグランを、近隣の市民が利用しているシーンも紹介されており、近年、地域連携を重視している施設運営会社の方針もあって、サービスエリアが地域のPRの場となるだけでなく、地域の人が集まる広場になっている様子もうかがえた。

地方の鉄道の衰退で、駅がその機能を失いつつある地域が多い中、高速道路の休憩施設が新たな「地域の核」の役割を担いつつあることを感じられる番組でもあった。

今回、演奏を披露した17組の中には、高速バスとタンクローリーの運転手の姿もあった。

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ピアノを始めたばかりだという、名古屋から東京へ移動中の60代のタンクローリー運転手が挑んだサザンオールスターズの「TSUNAMI」の演奏は、つたない指の運びの向こうに、彼のこれまでの人生が垣間見えて、聴いていて思わず胸が熱くなった。

高速道路は人やモノを運ぶだけでなく、幾多のストーリーを交差させる役割も果たしている。次回、新東名を走るときには、ぜひ浜松SAのミュージックスポットでだれかの演奏に耳を傾けてみたい、そう思いながら番組を最後まで視聴した。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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