交通危機の救世主になる「グリスロ」とは何か? 地域に根付くグリーンスローモビリティの公算
島根県大田市、世界遺産の石見銀山観光で小型カートがのんびり走る。広島県福山市の沿岸部、道幅が狭く急な坂道を小型カートのタクシーが走る。
茨城県境町では運用費用を町費で全面的に負担し、町民が無料で利用できるフランス製の自動運転バスの定期運行が始まっている。そして、秋田県上小阿仁村では、道の駅を拠点とした自動運転の小型カートが住民を乗せて雪道を走る……。
こうした公共的な役目で使われるさまざまな新しい移動手段を「グリーンスローモビリティ」と呼ぶ。
エコカー、サポカー、またはEVといった、環境や安全に関係するクルマの総称はいろいろあるが、全国的にみるとグリーンスローモビリティはまだ一般的な認知度は高くない印象がある。
それでも、グリーンスローモビリティを各地で取材してみると、“社会における様々な課題の解決策のひとつ”になる可能性を秘めていると感じる。
さて、なぜこのタイミングでグリーンスローモビリティに関する記事を発信するのか。
それは、全国各地でさまざまなグリーンスローモビリティの取り組みがある中で、国が詳細を整理し、今後の対応について具体的な提言を示したからだ。
未来につながる「手引き」の存在
国土交通省 総合政策局 環境政策課が2021年5月に公開した「グリーンスローモビリティの導入と活用のための手引き」がそれにあたる。
この手引きの中では、グリーンスローモビリティの愛称として「グリスロ」というロゴマークも紹介している。
あわせて、現在は一般財団法人 日本自動車研究所所長で、元東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長として、グリーンスローモビリティや超小型モビリティ等について長年研究に携わってきた鎌田実氏による寄稿文「グリーンスローモビリティのさらなる発展に向けて」も公開された。
この手引きから引用すると、グリーンスローモビリティの定義には、次の3つの要素が含まれる。
<時速20km未満で走行>
道路運送車両法の規制が一部緩和されているため、窓ガラスなし、またシートベルトやチャイルドシートの装着も免除(ただし、地域の必要性に応じて装着を妨げるものではない)。
<電動車(EV)の活用>
CO2排出量の削減と、走行中の音の軽減。
<小さな移動サービス>
「ゆっくり・余裕をもって・近くまで」。従来型の公共交通の「はやく・時間通りに・遠くまで」の対比として。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら