交通危機の救世主になる「グリスロ」とは何か? 地域に根付くグリーンスローモビリティの公算

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グリーンスローモビリティは、都市部での中心市街地の回遊、観光地での回遊、郊外部住宅団地と路線バス停留所の連絡線、また離島では港と集落内の連絡線としてなど、いわゆる「ラストワンマイル」「ファーストワンマイル」と呼ばれる領域での持続的な利活用が求められている。

グリーンスローモビリティとひとことでいっても、車種、運用形態、運用方法など多岐にわたるため、これから導入しようとする自治体や交通事業者等にとっては、自分たちが目指すべき利活用の方向性を定めることが難しいという面がある。

そのうえで、今回の手引きは、成功事例や“きれいごと”を並べるのではなく、例えば関係者間で導入に向けた協議ののち事業化に至らなかった理由と、それに対して今後検討すべきポイントを明記するなど、社会課題を直視する姿勢を示している点が特徴だといえる。

問題は「どのように実現させるか?」

これまで全国各地でさまざまなグリーンスローモビリティの実証が行われてきたが、継続的な事業として成立させるためには、資金面、人材面で超えなければならないハードルは地域によって大きく異なり、事業化を断念するケースも珍しくない。

また、グリーンスローモビリティの成功事例として各方面で紹介されることが多い、福井県永平寺町の遠隔操作による自動運転においても、持続可能な運用についてはまだ多くの課題があると思う。

筆者は同町の街づくり施策に直接関わる永平寺町エボリューション大使として、町役場を中心とした各方面の関係者と、これまで約3年間にわたりグリーンスローモビリティを含めたさまざまな交通について議論を重ねてきた。

永平寺町ではゴルフカートベースのレベル3自動運転車を走らせている(筆者撮影)

だが、近未来に町が直面するであろう地域交通に対する「危機感」を関係者間で共有し続けることはとても難しいと痛感している。

そうした中、今回公表された「グリーンスローモビリティの導入と活用のための手引き」を読みながら、自らが初心にかえり、これからも粘り強く町の変革を支えていこうという気持ちになった。

身近な「小さな移動サービス」であるグリーンスローモビリティは、日本の地域社会のこれからを考えるための、ベンチマークになると思う。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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