コロナ禍を経て「再国営化」に向かう英鉄道の事情

複雑な「フランチャイズ制度」見直し一元化へ

英運輸省は5月20日、鉄道事業の改革に向けた指針を示した白書「グレート・ブリティッシュ鉄道―ウィリアム氏とシャップス氏による鉄道事業に関する計画」(以下、白書)を明らかにした。

この白書は、前述の2018年5月に起きたトラブルを契機に、当時ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)の最高経営責任者(CEO)や会長の職にあったキース・ウィリアムズ氏が中心となって編纂した鉄道業界の見直し案に沿っている。ちなみに、表題にあるもう1人の名前であるシャップス氏とは、現在の運輸相であるグラント・シャップス氏を指す。

同白書は、列車運行会社とインフラ管理会社が共同でサービスを提供し、これをより広い地理的エリアをまとめる形、つまり「いま、日本で行われているような方式に近いもの」が望ましいと綴られている。

「グレート・ブリティッシュ鉄道」

その中心となるのが、白書の表題となっている「グレート・ブリティッシュ鉄道(GBR)」だ。これこそが「鉄道事業の再国営化」の軸となる公的機関で、運賃やダイヤの設定、鉄道全体の財務管理、線路・信号インフラの整備などを担い、2023年の発足を目指す。

列車の運行方式については、1997年の鉄道民営化に際して導入されたTOCに運営権を与えるフランチャイズ制度を全面的に否定。TOCに代わりPSO=旅客サービスオペレーター(Passenger Service Operators)という事業体が運営を担う。

PSOは引き続き民間企業からの入札で決定するが、現在のTOCとは異なり、運賃やダイヤの設定などはGBRが行い、旅客運賃などの収入もすべてGBRが吸い上げる。その一方で、運営に必要なあらゆるコストは運行サービスを提供した対価としてPSOに支払われる仕組みとなるため、企業側のリスクは大幅に軽減される。このため、政府には「民間企業の鉄道事業への参入のハードルが圧倒的に下がる」という期待もある。

シャップス運輸相は今回の白書発表に際し、「複雑で、かつ破綻しているシステムを終わらせる」と断固たる態度で改革に当たる姿勢を示している。

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