180万円はどこへ消えた?「保育士給与」の不可解 明らかになった「地域ごと人件費」で見えること
「行政から出ている保育士の収入が会社員の平均より高いとは思いませんでした。待遇が悪くて先生はすぐ辞めて入れ替わってしまい、子どものケガが多くて心配です。保育士の待遇改善なしに子どもの安全は守れません。私たちが働いて納める税金と保育料をきちんと人件費に充てて安全な保育をしてもらうよう、事業者に要請したいと思いました」
人件費が他の目的に流用されすぎる問題
このように、地域区分別の人件費の金額が明示されることで問題点が浮き彫りになってくる。国会では、3月4日の参議院の予算委員会で通知改定について内閣府に提案してきた片山大介議員の質疑(「ついに判明した『不当に低い保育士給与』の実際」)に続き、4月の衆議院の内閣委員会でも早稲田夕季議員が保育士の賃金の公費と実際の差額について問題視した。
早稲田議員が公定価格と実際の賃金差について問うと、坂本哲志・少子化対策担当大臣が答弁したのは、処遇改善費が入っていない公定価格の基本分の人件費額から処遇改善費が入っている実績の金額を引いた金額だった。これでは差が小さく見えてしまう。坂本大臣が東京23区での差を「61万円」と答えたため、早稲田議員が反論した。
「大臣の答弁は、(公費から出る金額に)処遇加算費が入っていない額です。そこを比べられて61万円と言われても大分少なくなります。東京都独自の処遇改善費も含めると、最大で200万円近い差があることをしっかり認識していただきたい。委託費の流用も大変問題になっています。全国の実態調査を行うことを強く要望します」
ここでいう「委託費の流用」とは、「委託費の弾力運用」を指す。認可保育園の設置はかつて自治体と社会福祉法人にしか認められていなかったが、2000年に営利企業にも設置できるよう規制緩和された。それと同時に「人件費は人件費に使う」という運営費の使途制限が大幅に緩和され、人件費分が他の目的に流用されすぎるという問題が起こっている。
本来は委託費の8割以上を占める人件費比率が、営利企業を中心に5割程度しかない実態を受け、国会では委託費の弾力運用を見直すべきだという声が高まっている。今年に入ってからも衆議院では阿部知子議員、大西健介議員、吉田統彦議員が、参議院では田村智子議員が委託費の弾力運用について国会で取り上げている。
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