N高「過重労働」、教員組合と真っ向対立の泥沼実態 労基署の是正勧告には対応も、すれ違いは続く
この成長領域で、もっとも注目を集めていたのがN高だった。開校は2016年。初年度の生徒数は1500人だったのに対し、現在はN高の収容人数が限界を迎えたために新設されたS高等学校も合わせ、約1万8700人(2021年5月末時点)の通う”マンモス校”に成長している。
その勢いは業界の中でも群を抜いており、足元では通信制高校で長年トップだった高校を抜き、シェア1位に躍り出ている。「(N高には)有名講師を派手に起用しているイメージがある。自分たちは特色を出し切れず、(後発のN高に)抜かれてしまった」(前出の企業幹部)。
実際、N高は一般の高校にない多様な教育コンテンツをウリにしている。例えば、VR(仮想現実)技術を活用した授業や、政治家や著名人を講師に招く「政治部」、株式運用を学ぶ「投資部」のようなネット部活だ。
だが、こうした先進的取り組みの背景に教員たちの過酷な労働があったことが疑われている。
授業の傍ら、150人の生徒とやり取り
冒頭の会見に出席した教員らによれば、生徒1人当たり年間5日程度行われるスクーリング(対面授業)の期間はとくに、休憩をとるのが困難なほど忙しかったという。スクーリングは5月から、約8カ月にわたって続く。最も繁忙となる10月には、土日にも授業を行う場合がある。
同期間、教員は8時半に登校、10時から12時20分まで午前の授業を行う。13時には午後の授業が始まるため、昼休憩は40分ほどだ。加えてこの40分間にも、担任している生徒からの問い合わせ対応やレポートの採点、当番制の校舎内外巡回などの業務が生じる。
学年などによって異なるが、N高の教員は1人で150人ほどの生徒を担任する場合もある。そのため、生徒からの相談や連絡への対応業務が膨大だったようだ。とくにスクーリング期間中は日中の時間帯をほぼ対面授業に取られ、時間外に及びがちだったという。
会見に参加した教員は「(スクーリング期間は)実質的に休憩がない」と主張。最も忙しい時期には過労死ライン(月間80時間)を超える91時間ほどの残業があったと訴える(労基署の認定は66時間)。
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