「予約のない客現る」添乗員も参ったツアー事件簿 アクシデントこなすベテラン派遣添乗員の技

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もう1つのケースは、東京の池袋発のツアーであった。参加者の受付をしていた私に、老夫婦がツアーの旅程表を差し出して、「このツアーの係の人かい?」と訊いてきた。

旅程表を見ると出発は7時で、バスはとうに出ていた。私のツアーは、7時半出発である。同じ旅行会社ではあるものの行き先の異なる、まったく別のツアーであった。

要するに2人は勘ちがいをして、30分遅れで来たというわけだ。そのことを伝えると、せっかくここまで来たのだから、代わりに私のツアーに参加させてくれとせがまれた。

これまた旅行会社に相談すると、席に余裕があればいいとのこと。その日は空席があった。それで夫婦は当初の予定の静岡から山梨へ、まさかの行き先変更の旅となった。

いずれの二例も昼食の人数変更を、食事処へすぐに連絡した。当日に減ることはあっても、増えることなどめったにない。事情を説明すると、先方も驚いていた。

「しまった!寝坊だあ…」まさかのツアーは中止

名簿にのっている参加者が集合場所へ来ない「ノーショウ」は、「ゴーショウ」とは逆によくある。

現在の日帰りツアーは、前日に添乗員から参加者へ、確認の電話を入れないのが普通だ。そのためツアーのことを忘れて、当日に現れずということが間々ある。

そういう場合、添乗員は「ノーショウ」参加者や旅行会社に、すぐに連絡を入れる。そういうドタバタ劇の果て、予定よりも10分から20分ほど遅れて、バスが出発というパターンが多い。

ほかの参加者に迷惑はかかるわ、スケジュールの消化に支障をきたすわで、難儀な旅のスタートとなる。ただしその場合は、ツアー代金を支払った側のドタキャン劇。「ノーショウ」本人が、損をするだけの話だ。

ところがツアーを導く立場の「ノーショウ」となると、大変なことになってしまう。添乗員の研修の席で、見習ってはいけない悪例として、2つの事例が紹介された。

まずは東京駅から新幹線に乗って、広島を観光するツアーでの不始末。添乗員が前夜に酔いつぶれて、当日の集合時間に現れなかった。

添乗員は前日にツアーの準備段階で、旅行会社から新幹線の団体乗車券を渡されていた。結局、「ノーショウ」で参加者は新幹線に乗れず。そのためにツアーそのものが、キャンセルとあいなってしまった。

ツアーのキャンセル料の総額を、旅行会社は派遣会社に請求。派遣会社はデタラメ添乗員に、その請求書に加えてレッドカードを突きつけたという。

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