「予約のない客現る」添乗員も参ったツアー事件簿 アクシデントこなすベテラン派遣添乗員の技
続いては成田空港発のスペインツアーの不祥事。東京のある大手派遣会社が自前では添乗員が足らなくなり、大阪支社から人を回してもらうことになった。大阪から成田へは、新幹線で移動することになっていた。ところがその添乗員は交通費を浮かして、小遣いかせぎをしようとたくらみ、高速バスに乗る。
悪いことはできないもの。高速道路上で死亡事故が起きて、通行止めとなってしまう。そのためツアーの出発時間に、間に合わなくなってしまった。連絡を受けた派遣会社では社員がアワを食って、パスポートを持って空港へ駆けつける騒ぎとなった。
救いは新幹線と違い、航空券は当日に空港で、旅行会社のスタッフから手渡されることだ。そのためツアーは、ギリギリのところで成立。駆けつけた社員は10日近くにわたって、冷や汗ものの添乗業務をこなしたという。
先輩が「ノーショウ」をしでかした!
最後に私の「ノーショウ」体験談を披露する。もちろん私がしでかしたことではない。同じツアーの台数口でコンビを組んだ先輩の不行跡で、私はそれを目撃したのである。その日、先輩と私は東京都下のJR立川駅前が、バスの出発地であった。ただし2台のバスはその後、別々の場所で集客してから、金沢へ向かうことになっていた。
集合時間はともに6時半で、私はその30分前から受付業務をしていた。そうしている間に2台のバスの参加者は、ぽつりぽつり集まってきた。しかし先輩は、いまだ現れずであった。やがて私のバスの参加者が、全員そろった。もう1台のほうも、かなり集まっている。私は先輩に電話したが、つながらなかった。それで派遣会社の緊急連絡先に電話し、状況を報告した。
もう1台のことは気になったものの、私のほうも次の集合地で参加者が待っている。後は派遣会社の社員に任せて、バスを出発させることにした。もう1台のほうは社員の指示で、ドライバーが参加者をバスに乗せる形で、集客場所を回った。そして最後の乗車地で、タクシーで駆けつけた社員がからくもバスに乗るという、綱渡りの集客業務となった。
結局、先輩は現れずじまい。参加者には添乗員が体調不良で、自分がピンチヒッターで来たと言い訳したそうだ(後でわかったことだが、これまたドロ酔いのあげくのご乱行)。
ピンチヒッター社員とは連絡を取り合い、高速道路のサービスエリアで落ち合った。何しろその社員は身ひとつで現れて、ツアーのことは何もわかっていない。急いでツアーに関する書類をコピーするなどして、今後の打ち合わせをした。
20代の若手男性社員は、深い眠りを突然に断たれ、今まさに起きたところという様であった。
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