カマラ・ハリス氏が銀行相手に激論した一部始終 「まるで犬の喧嘩」とハリス氏が記した対話
自己弁護に終始していた銀行側の弁護士
私たちは会合が開かれるワシントンの法律事務所〈デビボイス&プリンプトン〉に到着した。広い会議室に案内されると、そこには10人以上が集まっていた。
一言二言丁寧な挨拶を交わし、長い立派な会議用テーブルの席に着いた。私は一方の端に陣取った。大手銀行の首席顧問弁護士たちが、「ウォールストリートの外傷外科医」の異名をもつ弁護士をはじめ、最も有能な弁護士チームとともに顔をそろえていた。
協議が始まった瞬間から、緊迫した空気に包まれた。バンク・オブ・アメリカの弁護士が交渉チームに向かって、銀行をひどく苦しめていると責め立てた。冗談ではない。その弁護士は、和解交渉には失望しているだの、銀行はひどい傷を負っているだの、行員たちは危機以降あらゆる捜査と規制改革への対応に追われているだのと言い募ったのである。みんな疲れ果てています。彼女はそう言った。そして私たちにどうにかするよう迫った。何をぐずぐずしているんだと。
すぐさま私は強い調子で言い返した。「苦しめられているですって? では銀行のせいで苦しんでいる人がいることはご存じなのですか?」。私は腹の底から怒りを感じた。住宅所有者たちの苦しみが軽んじられ忘れられているのを知って、憤慨した。「カリフォルニアには、親が家を失ったせいで学校に行けなくなった子どもが100万人もいます。苦しんでいる人たちの話をお聞きになりたければ、いくらでもお話しします」
銀行側の弁護士たちは冷静ではあったが、自己弁護に終始していた。要するに、責任はあくまでも、払えない住宅ローンを組んだ家の持ち主にあるというのだ。それには承服しかねた。家を買うということが現実の人生でどんな意味をもつかを、私は考えつづけていた。
大多数の家族にとって、家の購入は自分がかかわる最大の金融取引である。大人にとっては、それまでのあらゆる努力の証であり、人生で最も自己肯定感が高まる出来事だ。あなたはその手続きに関係する人たちを信頼する。銀行が住宅ローンを組めると言えば、担当者がさまざまな数字を審査し、手に負えない額を借りさせることなどないと信じる。融資の申請が通れば、仲介業者はまるで自分のことのように大喜びする。
事務手続きの仕上げは、署名セレモニーだ。シャンパンでも抜きたい気分になる。仲介業者も、銀行の担当者もそこにいる。彼らは心から自分のためを思ってくれていると、あなたは信じる。目の前に書類の山を置かれても、信頼して署名する。また署名する。次の書類も。また次の書類も。
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