カマラ・ハリス氏が銀行相手に激論した一部始終 「まるで犬の喧嘩」とハリス氏が記した対話

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私はその場にいる弁護士たちの顔を見渡した。初めて家を購入するときに、住宅ローン書類の一字一句に目を通した人など一人としていないはずだ。私が最初にアパートメントを買ったときも読まなかった。

銀行側はどうやら、自らの行動が、それにかかわる人たちにとってどんな意味をもち、その人たちがどんな人たちなのかをまったく知らないで、住宅ローンの話をしていたらしい。苦しむ住宅所有者の特徴や価値観について、銀行がひどい思い込みをしているようにも感じた。私はそうした住宅所有者に何人も会ってきた。彼らにとって家を買うことは単なる投資ではない。それは目標の成就、自己実現なのだ。

私はミスター・シェルトンの姿を思い出していた。彼はいつも前庭にいて、朝はバラを刈り、芝刈りをしたり水をまいたり、肥料を与えたりしていた。あるとき、弁護士の一人に尋ねてみたことがある。「知り合いに庭の芝生を自慢する人はいませんでしたか?」

JPモルガンの顧問弁護士に返した言葉

堂々めぐりは続いた。彼らは、脅せば私が言われたとおりにするとたかをくくっていたのだろう。ところが、彼らの意に反して私は屈しなかった。協議も終わりに近づいたころ、いかにも自分の策に自信ありげな顔をして、JPモルガンの顧問弁護士が口をはさんだ。

彼の両親はカリフォルニアの人で、私を支持し、私に投票したのだという。和解に応じれば大喜びする有権者がたくさんいるはずだと彼は言った。和解こそが政治的駆け引きの格好の手段になると、彼は信じきっていた。

私は彼の目をまっすぐに見た。「これが法執行措置であることを、まさかお忘れではありませんよね?」。部屋は静まり返った。開始から45分。話し合いはもう十分だ。

「はっきり言って、この提案内容では自分たちが招いた損害を認識しているとはとても思えません。私は本気です。片っぱしから捜査します。何もかも」

ウェルズ・ファーゴの顧問弁護士がこちらを向いた。
「捜査を続けるおつもりなら、われわれがあなたと和解する必要がどこにあるというんです?」
「それはそちらでお考えください」と私は返した。

部屋を出たときには、全州交渉から完全に抜ける決心がついていた。私は決断を告げる文書を書いたが、発表は金曜夕方、市場が引けるまで待った。市場動向に影響が出かねず、それは本意ではないからだ。私が決断したのは、目立ちたいからでも、騒ぎたいからでも、株価を暴落させたいからでもない。助けを必要とし、助けを受けられて当然の数百万の人々のために正義を成し遂げたいからなのだ。

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