英国日用品大手が中国「粉ミルク事業」売却の裏側 地方都市や農村部で知名度が低いという課題も

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イギリスのレキット・ベンキーザーは傘下の乳幼児向け食品メーカーであるミード・ジョンソンの中国事業を春華資本に22億ドルで売却することを発表した(写真は同社ウェブサイトより)

イギリス日用品大手のレキット・ベンキーザーは6月6日、傘下の乳幼児向け食品メーカーであるミード・ジョンソンの中国事業を、中国のプライベート・エクイティー・ファンドである春華資本(プリマベーラ・キャピタル)に22億ドル(約2409億円)で売却すると発表した。

今回の売却の対象には、オランダのナイメーヘンと中国の広州にある2つの工場が含まれる。また取引完了後、春華資本はミード・ジョンソンの、製品ブランド名である「藍臻(エンフィニタス)」「鉑睿(エンファミリ)」「安児宝(エンファグロウ)」の、中国における永久的な独占使用権を取得する。レキット・ベンキーザーは、中国以外の地域では、ミード・ジョンソンの事業をこれまでどおりに続けるとしている。

ミード・ジョンソンの中国事業に関しては、レキット・ベンキーザーが20億ドル(約2190億円)で売却を希望していると、ブルームバーグが5月中旬に報じていた。競争入札には、ベインキャピタルやカーライル・グループ、コールバーグ・クラビス・ロバーツ、セコイア・キャピタル・チャイナといった投資ファンドや、中国の大手乳業メーカーの伊利実業​集団や新希望乳業などが参加したという。

最終的に落札した春華資本は、アメリカの投資銀行大手であるゴールドマン・サックスの大中華地区のトップを務めた胡祖六氏が、2010年に独立して創業した。胡氏は、中国のEC最大手の阿里巴巴集団(アリババ)やその傘下のフィンテック企業の螞蟻科技集団(アントグループ)、ショート動画アプリの「TikTok(ティックトック)」を運営する字節跳動科技(バイトダンス)、外食チェーン大手の百勝中国(ヤム・チャイナ)などに投資してきたことでも知られている。

中国での粉ミルクのシェアは縮小傾向

ミード・ジョンソンは創業100年を超えるアメリカの粉ミルクの老舗ブランドで、2017年にレキット・ベンキーザーに買収された。だが、中国市場での粉ミルクのシェアは年を追うごとに縮小していた。調査会社のユーロモニターのデータによると、2016年には6.7%だったシェアは2020年には5.1%まで縮小し、シェアランキングも3位から8位に後退した。

本記事は「財新」の提供記事です

財新記者の取材に応じた乳製品業界の専門家は「ミード・ジョンソンは地方都市や農村部で知名度が低く、国産ブランドである『飛鶴乳業』や『君楽宝乳業』に勝ち目がない。さらに大都市での販売でも、アメリカの『ワイス』やフランスの『ダノン』など海外ブランドとの競争に勝つ戦略が打ち出せていない」と語った。

(財新記者:沈欣悦)
※原文の配信は6月6日

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