「キングダムは設計が命」作者が明かす制作秘話 根底にはプログラミング的な考え方がある

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同じころ、原氏の前には漫画家という一筋の光も見え始めていた。幼少期から絵には多少の自信があったが、漫画家は雲の上のような憧れの職業。ただ、芸工大に入り、さまざまな情報に触れるなかで現実的に映画監督として食べていく難しさも感じ始めていた。

「映画は1人ではつくれないけれど、漫画は1人でも完成させることができる。そんなことに気づいて大学3年生のころに漫画を描き始めました」

完成した漫画を「ちばてつや賞」のヤング部門に応募したところ「期待賞」を受賞する。

「編集部から受賞の知らせを受けたときは、跳び上がるくらいびっくりしてうれしくて。初めて漫画家という職業が現実味を帯びてきました。ただ一方で何かの間違いなんじゃないかという思いもありました」

修士課程の修了後はSEの会社へ就職

大学で学びながら、漫画を描き続け、「ちばてつや賞」ヤング部門の「準大賞」も受賞したが、プロになるという確かな自信は持てない。そこで、大学院に進む道を選ぶ。

「画像解析はそれなりにおもしろかったので、もう少し知識を深めたいという思いがありました。兄2人も歯学部で大学に6年行ったので、親からは『大学院に行ってもいい』と言われていたのも大きいですね。また、2年間あればその間にプロの漫画家になれるんじゃないかという不純な動機もありました」

大学院で研究したのは、画像認識。デジタルカメラやスマートフォンのカメラ機能を使って撮影する際、液晶ファインダーを見ると、人物の顔部分に四角い枠が表示される。いまでは一般的な機能だが、当時はまだなく、顔がどこにあるのかを捉えるためのプログラムや怒る、笑う、泣く、驚くなど表情を認識するプログラムもつくっていた。

「院生が4人くらいの小さな研究室でした。年に数回、学会発表があったので、みんなで旅行のような感じで、楽しかったですね。いま准教授として活躍している優秀な仲間もいて、刺激を受けました。研究室の瀧山龍三先生はユーモアがあって朗らかで。口には出さないけれど、いつも『大丈夫だよ、原君』と言ってもらっているような安心感を与えてくれる存在でした」

大学院での研究の合間にも漫画を描いてはいたが、プロにはなれない。修士課程の2年が修了し、研究室の紹介でシステムエンジニア(SE)の会社に就職する。

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