住宅価格上昇と住宅ローン、「金利リスク」に不安 「家計支払い能力」から住宅価格を検証してみた

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HAIを用いた分析は暗に「金融環境が所与である」ことを仮定しているが、「変動金利or固定金利」や「借入年数」などは消費者が選択することができる。住宅価格が上昇する中で、当初の支払い金額を抑制するために「変動金利」を選択し、「長期間」の住宅ローンを設定しているケースもあるだろう。

平均で「金利1%上昇」で「支払額20%増加」

ここで、HAIの試算で用いた「借入可能額」の試算を基に、変動金利が当初よりも1%上昇した場合の元利払いの増加率を試算した。ここ数年の変動借入比率の増加と住宅ローンの長期化により、金利上昇時の元利払いの増加率は大幅に上昇していることがわかる。

「金利が1%上昇した場合に、ローンの支払いが約20%増加する」という事実を把握したうえで住宅ローンを組んでいる人はどれだけいるだろうか。金融政策を正常化する過程で「隠れた住宅バブル」が明るみに出る可能性を意識しておく必要がありそうである。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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