元高も限界、試され始めた中国の「双循環」政策 人民銀行の元高容認姿勢に変化、修正に向かう

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筆者は2021年にドル高が実現するとすれば、重要なものはまずFRB(連邦準備制度理事会)の政策運営であるが、2020年にドル安の原動力となった元高のピークアウトも材料になると考えてきた。ここにきて中国の姿勢に変化が見られている事実は、筆者の基本認識を補強するものである。

2月10日のコラム『中国の「双循環」政策はドル安の要因になるのか』では内需主導型発展モデルへの転換を目指す新政策「双循環(デュアル・サーキュレーション)」に対する考え方を議論した。双循環の思想を額面通り受け止めれば、従前のような外需依存の成長を志向するとは限らず、人民元高もある程度は容認される可能性を説いた。事実、過去1年間で元は対ドルで10%以上も上昇しているため、この見立ては正しかったように思う。

一方で、双循環はあくまで内需と外需の併存を企図するものでもあり、輸出動向も依然として重要な判断材料になるはずだと考えてきた。具体的には名目実効レートに半年から1年程度のラグを伴って影響を受ける傾向のある輸出が揺らげば、PBoCもある程度は安値誘導に動かざるをえないと考え、それ自体が間接的なドル高圧力になる可能性を検討してきた。

欧米のペントアップ需要で輸出はまだ高水準

この点、過去1年間の元高ドル安にもかかわらず、まだ中国の輸出は勢いを保っている。それどころか年明け以降は加速している。6月7日発表の中国5月貿易統計によると、輸出は前年同月比27.9%増、輸入は51.1%増となっており、資源高によって貿易黒字の減少を招く構図が確認された。しかし、黒字が失われているわけではないし、何よりこれほどの元高が進んでも1~5月の輸出合計は前年同期比40.2%増という仕上がりである。

マスクや医療用防護服など昨年の輸出を牽引したコロナ関連特需は剥落する一方、ワクチン接種によってアフターコロナが視野に入った欧米向け輸出が堅調である。ペントアップ需要が元高という重荷を感じさせないほどの追い風になっているが、中国の貿易黒字は確実に積み上がり、それ自体が元高を呼び起こす一因になっているように見受けられる。

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